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ストーリー
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー平穏の契り、騒乱の誓いー
「今回の事案について全体の一側面しか見れない立場に置かれるか情報を完全にシャットダウンされるか選べ」とはさすがに酷い扱いである。ならば私はこの鳥籠から出てその俯瞰図を世の中に知らしめよう。 …あまりに詩的な”状況把握”に面食らった私はしばらく彼女の顔を見つめていた。 毎度のオリジナル言語の解析を嫌になったわけではないし彼女の相貌の美しさに見とれていたわけでもない。 私は”鳥籠の中での生活が日々の現実である彼女に外の世界がどれほど過酷な試練を与えるのか”みたいな「些細な心配事」に留まらない数々の懸念事項に対する彼女の考えを聞いておかねばならない。 そして出された答えが「自分の力で世界や秩序を正しく変えてみせる」というような熱を帯びていた場合は私自身の権限で彼女の自由意志を奪うことも視野に入れねばなるまい。 この神域で続いている奇跡的日常をこれからも護っていくために。 「それで今も続いているその”軟禁”が現状に与える影響というのはどれほどのものなの?この些末なレポートだけでは何もわからないのだけれど。」 「”ブリザード・レガリア”…我が氷雪の君。それ
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー起源の闇、根源の影ー
そもそも「マジェスティック・ピエロ」などという”愛称”がすべてを物語っているのではありませんか? 君主に対しての言葉としてはいささか以上に不適切な一言で謁見場のざわめきが静まった。 それもそのはずで今しがた展開された”幼児が積み上げた積み木のような頼りないロジック”は彼の語る未来像が全くの偶像であることを端的に示したものであったからだ。 それでも一同は信じていたかった…彼の語る「現実論」が現状の解決案として機能してくれると。 しかしこの場に集った皆が受け止めなくてはいけないのは彼が現状を背負えないということだけでは無い。 これからの「現実像」が自分たちの権利と自由意思を尊重してくれないだろう、という重すぎる自明の理であることだった。 「そして結局”日記”には願望、要望、希望的観測しか載っていない…話にならないわね。」 「それでも企画書としては使えなくはない。そうでしょう?」 議論は小一時間の平行線を辿っていた。 風花は任された議事録のまとめを半ば他人事のように眺めて何度目かわからないため息をついた。 明らかに不適切な空気を発している風花に対して周
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー義眼の皇女と千里眼魔女ー
君の待ち人は来ないよ…それだけは確かなことではないかな? 結論として浴びせられたその言葉に反論のひとつも返せなかったことは悔やみきれない心の傷だ。 それは古傷となった今でもなお自分の存在を主張している。 「現実」という名前を得たその傷口は私だけではなく周囲の皆の可能性や未来への展望を封印するに至り、「自分こそは唯一無二の”事実”なのだ」という自認を持つほどとなった。 挑むことも抗うことも許容してはくれない茨の枷となったその「現実」はいよいよ日々の暮らしからも安息を奪おうとしている。 そしてかつての誓いに捧げたこの命と魂もいよいよ契約の対価として消費する時が来てしまった… 新たな秩序の構築のために。 「そのとき光を失った皇女の右目に”世界の理を組み直す力”としての証である聖痕が刻まれた、か。最近はそういう救いのない話が流行りなの?」 新名は眉を寄せて傍らの相棒にこの話を持ってきた真意を確認しようとしたが、こちらが期待した反応が戻ってくるはずもない。 明らかに疲れた様子で”やれやれ察してくれよレディ”みたいな演技ががった肩のすくめ方が全てを物語ってい
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー無色の希望、灰色の展望ー
ふむ、それでは貴方が先代から譲り受けている筈の「僥倖の祝印」…それを私に預けてもらえますね? 全身に浴びた返り血を拭うこともせずに彼女は伝えるべき言葉だけを言い放った。 物言わぬ屍同然となった組織の代表は緩慢極まりない様子で自らの魔導刻印を摘出する。 彼の命と魂に同期してあったはずのそれは彼を見限ったかのように輝きを失った。 …正当な儀式の上で譲渡されなければ秘められた秘術も蓄積された知識も得られない事は彼女自身が一番熟知していたはずだ。 そしてこのような簒奪された刻印が通常通りの祝福を授けてくれるわけもない。 それでも彼女は刻印所持者の有することのできる称号をこれから名乗れることに大層ご満悦のようである。 この場の誰もが彼女の力をこれまで以上に畏怖してこれから受容せねばならない運命を覚悟した。 こうして書き変わった「現実」という名の魔獣の舌なめずりの音が誰の胸にも染みわたっていったのだ。 その「事実」がこれからの支配者の象徴となった瞬間であった。 「そうね…平日の業務の大半が”日常維持”なのだから「維持システム攻略」や「システム不備探し」が娯楽
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー可能性と展望の見せた理想郷ー
”グレイレッド・フェノメノン”…その称号が滅びの前兆の代名詞と認知されるまでに時間はさほどかからなかった。 しかもその動きと同調するかのように広まった「”運命”操作の能力者」の噂は「自助努力至上主義」以上に人々の意識と魂を焦がしていく。 そして次第に空気感染ウイルス以上の脅威となったその構成メンバーの二つ名は次第に死の象徴というイメージを通り越し、来世への転生をもたらしてくれる救世主の証へと変貌していく。 すでに誰もが「現世への執着を捨てることこそ救済への道」と”悟って”いった… そう自分の求める幸せが自分の中に存在しない、との諦念と共に”現実的観測”の重さに屈してしまったから。 「いっそ山吹色のお菓子で解決できることの方がよっぽど健全だったわね…」 ふと漏れてしまった栞のつぶやきにお付きの巫女はぎょっとした表情を隠せず凍り付いた。 栞はそのことにも感情と配慮の為のリソースを割くことができずに思わずため息をつく。 神宮の中というのが信じられない程の議場の騒ぎはさらにヒートアップして収まることを知らない。 黎明の女神の顕現や「宝物庫」の騒動、「公用
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー燃焼と引火のマリアージュ要因ー
「”至純”の猛火」…彼女は確かにそう名乗ったのだな? 極度に乾いた空気の中で口を開いた上官は現地の被害状況に微塵の関心も無い様子でそれだけを確認するに留まった。 異能者の振るった能力が巻き起こした災害にも等しいこの場の有様。 まずそれの収拾を指示してくれるものだと現地の人員は揃って信じていた。 しかし駆けつけてくれた筈の同僚達は現地のリソースを疑いも無く次の作戦行動の為だけに費やしている。 そしてその様子を呆然と見ていた私達に向けられた視線に込められた感情は同情でも憐憫でも無かったのだ。 そう、運命の歯車に求められるのは現場が稼働するための機能だけだったから。 「”プルミエール・スカーレット”…?何かの暗喩だったりするのですか?」 「いや、それが正式なコードネームとして扱われているのは確かね。今手元の情報でわかるのは超法規的魔術ギルドを指す単語だということだけ…というのが”表向け”の対応なの。」 千里はあからさまに訝しむ新名の様子を見て気まずさを感じ、詳細を噛み砕く手間を取ることにする。 「元々は「”生命の解体”から純度の高い魔術要素や魔術的マテ
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー異なる理想下の可能性についてー
ふむ、「末世における汎式価値創造論」か…確か”ホワイトジュエル・ロータス”の中でも一番の過激派が主張している持論だったな。 ステラはその彼なりの解釈を聞いて頭痛を感じていた。 ”学会”系列の話題は現状触れるのを避けたほうがいいというのがステラなりのスタンスだが、これほど名指しで議題に挙げられては流すのも非礼にあたるだろう。 蓮の花の紋章を掲げてロータスという名前を冠するところで自明ではあるが、「自助努力の神格化」という教義をより強めたその組織は自らの崇める対象以外を排除した理想郷の実現のために手段を選ばない。 そしてその為の行動はすべからく”慈悲”と主張するのが構成員の信条であるらしい。 ステラの自意識の中でくすぶる危機意識は目の前で自らの言説に陶酔している彼に向けたものではなかったが、彼の背後に見える思考統制系の異能者であるだろう人物に対してのものなのは確かだ。 誰がどのような理想郷を信望するのも個人の自由だが、場の不文律として掲げるのにはまずコミュニティ内での同意を取り付けるのが一般的作法なのではないか? ステラは招待されたこの豪奢な内装の部
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー理知的選択と感情的選抜ー
それが今の君が持てる唯一の身分証明…「ピジョン・ブラッド」の一員である証というわけか。悲しいものだな。 哀れみとも同情とも取れない光を宿したその瞳は明らかに私を視界に入れていないことがわかった。 それによって伝わるのは侮蔑でも嘲笑でもない深い「失望」だ。 そもそも私に期待をかけてなどいなかったはずの彼はどのようにこの場を締めるかだけを考えているのだろう。 そして処断を下されたあと、私は自らの異能を関連記憶ごと封印されて「一般人」へ戻るのだ。 …かつて”特別な日々”を、”特別な自分”を夢想していたあの頃のように。 「毎度のことながらこの通達メールが届くと憂鬱な気分が増すわね。フォントだけでも可愛らしくしてもらえないかしら?そう思わない?鯨井教授。」 「フィールグッド…そんな事を言っているから面倒くさがられるのだろう。今回に限らずプロトタイプ「S」地区の不都合はまだ山積みなことを自覚してくれないか?」 ルカはヘレンのマイペースぶりに辟易しながらも情報共有の為のリソースを噛み砕く作業に戻る。 今喫緊の課題は異能発現の際の意識障害と人格調整について…と
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー「真実」がもたらす価値、「事実」が招く未来ー
冷めたコーヒーの香りがあたりに広がってふと我に返った。 そうだなあの場はあの”氷の女王”の牙城で彼女のお気に入りの拠点だ。 さらにEGO内部の「ノワール派」の総本山でもあった…ということは今練っている案は無意味どころか敵意を招くだけの代物に違いない。 「空白の中には穢れなき純白ではなく闇夜のごとき黒がふさわしい」が信条というあの場において情熱や展望など見込める筈が無いのだ。 …つまり今構築するべきは未来への希望ではなく過去を塗りつぶすほどの渇望なのだろうか? それともかつて皆が憧れた「現実像」の具現化こそが求められているのか? 現状だけでは判断することが難しい。 それでもこれから訪れることが確実な絶望は未熟な願望をことごとく丸呑みにして新たなモンスターを生み出す。 「それ」は日常を侵食して奈落の底そのものを「現実」たらしめるだろう。 そうなってからでは新たな未来も生まれようがあるまい…地獄の釜の中はすでに煮立っているのだ。 絶望的観測を終えた彼女は長らく大事に抱えていた性善説を意識の奥へ閉め出すと、意識掌握の異能のリミッターデバイスを握りつぶした
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー未見の意味と予見の意義ー
今口にした破滅を呼ぶ言霊…何を意味するかわかっての事だと理解していいのだな?アンタレス。 聖堂に響いたその言葉は一切の情状酌量を希望できない圧力でフォルナの意識を圧迫している。 滴り落ちる雨水の音さえもフォルナの自我を揺らしていた。 しかし理解に苦しむ。レイナ様は何故あのような妄言に等しい提案を受け入れることにしたのか。 私の預かり知らぬところで「協定」の見直しが行われたのか…宿命の組み直しと共に? いや、皇帝直属隊のみならず帝国軍全体の未来を見据えての統括官の意思決定に否やは無い。 それでも”進言”を試みたのは自分の意思だけの問題では無かった。 そう、あの時私が見た「世界の変化」を伝えなければ。 「門」の奥に開けたあの領域…アレはこの世界に存在してはいけないモノだ。 世界の枠組みをも崩すだろうその存在。それを表現しただけでこの因果の揺らぎ。 今にも思考が途切れて箇条書きの情報が頭の中を乱してくる。 フォルナはその時の記憶をより強く鮮明に脳裏に映し出して言葉を紡ぎ直した… それが自分の存在意義を歪める事を確信していながらも。 「…その時の内容が”
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー許容の誓い、受容の証ー
そうか、「正解は”唯一無二の回答”にはなりえない」が君の持論だったね。 その一言を聞いてぼんやりとした意識の中で彼女を呼び止めた事を後悔する。 リユニの自我は限りなく希薄になっていて足元もおぼつかない。 えっと…何がどうなったんだっけ?大司教様の言葉を聞いた時に私の中の何かが弾けたようになって、それから… 突如ホワイトアウトした自己意識を持て余したリユニの様子を興味深そうに観察していた彼女は肩をすくめておどけた表情で問いかける。 何故今自分がここへ来たのかわかっていないのかな?君には受け取る資格があるはずだよ? 意思の疎通加減を少しづつ確かめるように紡がれる彼女の言葉がリユニには理解できない。 自分の日常言語が古代のそれになってしまったような奇妙な感覚。 今まで構築されていた「理想郷」の概念が紐解かれて、ありのままの「現実」へと組み変わる様を私の意識が受信している。 それと同時に暗唱できる程に読み込んだ「聖典」の記述の”意図”がリユニの意識へ流れ込み、覚えの無い記憶が脳裏に刻み込まれる。 そしてリユニの背中に現れた一対の羽が淡く光り輝いて三対の黄
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー理想のもたらす宿命と因果ー
君が抱く憂国の思いはかけがえの無い高貴なものだ…しかしその思いだけで現状の問題が解決できるとは思ってはいまい? 玉座のごとく華美な装飾を施された椅子に座り彼女は定型通りの言葉を並べて悦に入る。 その様子に頭痛を抑えきれなくなっていたユーリアはなんとか会話の主導権を取り戻そうとして脳裏にいくつもの攻略ルートを練ることにする。 しかしダメだ。この道筋の原点は彼女が組み上げたものであり、当然分岐点やたどり着く結末は当然想定されているに違いない。 そう、この屋敷が丸ごと爆破解体されても彼女はその不遜な笑みを崩さないだろうことが目に見えている。 そして幻惑系や幻想具現化系魔術でイニシアチブを取ろうなどというのは”本物”の「神域」を構築できる彼女にとっては児戯を相手にするかのようなもの…自らの術式で自滅することになるのは火を見るより明らかだ。 ではどうしたらいい?ようやくたどり着いたこの場の意義を投げ捨てる事は彼女とその一族に対する隷属を受け入れるのと同義。それでも… 出口の無い迷路に自ら足を踏み入れたユーリアの思案顔を愛し気に見ていた彼女はお気に入りの紅茶
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー求めた真理、授かった原理ー
ああ、恋に夢見る頃を過ぎたとしても芽生えた理想は色あせてはくれないものなのか? 私の行動理念を根底から縛りつける茨の枷と美しい思い出はかつての誓いの履行を求めてやまない。 それでも私は姉さんのように物分かりのいい人形を演じていられない…このルォノヴァーラという首輪が従属、いや隷属を求めている限りは。 ルシオラはレイチェルの在りようを変えようと何度も問いかけを繰り返し、ついには姉の自律思考を崩してまで外の世界への欲求を植え付けようとした…それがどのような運命を呼び寄せたかは想像に難くない。 しかし彼女の意思は今でも世界にそのまま存在している。 遥か遠く世界樹の根本、根源の檻と呼ばれる処刑場にその本体を閉じ込められたままで。 「…それで彼女の「幻魄体」はまだ捕捉できていないと?それがこの場でどのような意味を持つのか知らぬわけではないよね。」 夜羽子は努めていつもの口調で話すようにはしていたものの、不機嫌と不満の凝縮した言霊を発してしまっていた。 それもその筈彼女…ルォノヴァーラ家の純血種は元々ヴァンパイアの中でも上位種として「世界の管理者」としての異
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー”現在”が起こす揺らぎ、”現代”に起こるざわめきー
そう、これだけが黎明の兆しにしてこの先の栄華に繋がる道。その象徴である「紅玉の瞳の帝国剣士」を生み出す基盤となる術式なのですよ?雷蹄皇陛下。 この場の重圧をなんとも思っていないばかりか話の駆け引きすら楽しむ余裕を見せた眉目秀麗なその青年。 その背後には奇妙な気配を漂わせた槍兵が剣呑な表情でこちらを見据えている。 アルヴィナはまずこの状況に至った要因を脳裏に走らせて腑に落ちない要素を確認する。 様々な約定に基づいて保たれていたこの均衡、不可侵を交し合って停滞を維持していたこの「世界」。 それを「ひとつ」に纏めてより大きな器を造る…そしてもう一つの「世界」をも手にしよう? 理解が及ばない…そもそもの前提が違っている。現在の器でもう満ち足りているはずの現状を組み替えることにどれだけの意味があるというのか? アルヴィナはその青年のあまりにも優雅な佇まいに飲まれている自身の自我にもう一度語り掛ける。 ただの思い上がった士官願いの輩ならすぐさま消し炭にしてやったところだ。それに私の名前で何かを成そうという野心家であるなら子飼いにして遊ぼうという心つもりでもあ
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー現着した真実、そこにあった事実ー
今から遥か未来に生まれるとされる運命の双子…彼女達、ひいてはこの魔術文化圏の未来を拓くためにこの時を渡る禁呪の行使を許可します。 そしてこの任務を担う者としての称号でありWIZ-DOM名誉職としてそなたに「オーロラ」の銘を授けることとします。異論は無いですね?ミス・スウェーデンボルグ…いえミス・”オーロラコード”。 この場で粛々と進められていく魔導刻印の譲渡と拝命の儀式は厳かに行われていく。 それはこの世界の摂理に反してでも護らねばならぬ事に対しての誓約に違いない。 しかしいずれ訪れる水瓶座の時代への介入という此度の判断は教皇庁への反逆とも判断されかねない…まだ生まれたばかりのこの組織がこの判断をするのは明らかな自殺行為だ。 それでも今の教義が後の世での騒乱の元となるのを見過ごすわけにはいかない。 それが「先見」の異能を持つ者の使命である、と彼女は自らの決断が成す意義を改めて確認した。 例えそれが傲慢という名の罪業を生み出す元凶だとわかっていながら、だ。 そして彼女は盟主となって初めての命令を言い渡す…「聖典」の序章、その最初の一行が記された瞬間
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー事態の把握と管理者の眼ー
何…「使徒」についての情報は無いかって?あんたも例の件に一枚噛もうって事かい。 悪いことは言わないからやめといたほうがいいよ。 そもそも今の段階で基礎知識すら持ってない奴が首を突っ込める可能性は限りなくゼロだと思うぜ? 「扉」は管理者と担い手を自ら選ぶってのが古くからの言い伝えでね…この場に来て話を聞こうなんて輩には挑戦権すら無いってのがここの暗黙の了解であり不文律だ。 しかしあんたが俺の興味を引く代物を見せられるなら別だがね? …ジリアンはこの会話の一部始終を魔導器に記録し終わると、彼の魂に幻惑の刻印を刻みつけた。 彼がこれから先、永劫に自分の価値を疑わずに済むように。 「それでミス・マキャフリーが”寄贈”してくれたのがこの情報ですか。やけになんとも言い難い感情が渦巻いていたのはこれが原因と…?道理で自意識が委縮しているわけですね。なるほどライホルド警部のところに辿りついているわけです」 「オクリーヴ…あまりそこに触れないで上げてくれ。むしろ死の刻印が今そこに無いだけで奇跡なのだから。」 ウランはスイレンのあまりの同情の仕方に驚き咄嗟のフォロー
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー完璧と完全の間の埋まらない溝ー
おお…これこそが”サンテベール・ファイア”。「使徒」全ての血と魂の構成物を供物に捧げることで世界の穢れを焼き尽くすという贖罪の炎なのか? 禍々しい光を放ち、この場だけでは無くまさしくこの世界全ての運命を決めようとする意志が聖堂一帯に満ちている。それは新たな「聖典」の1ページが彩られることを意味していた。 そしてそれが歴史的に何を意味するのかは誰もが知ることになるのだろう…それに付随するものが破滅であるかどうかは関係ないことだ。 朗々たる声で講釈を続け、陶酔の極みに達している彼女をただ見つめるしかないディーナは身動き一つできない。そもそもこの場に引き寄せられた時点でディーナの自由意思は封じられている。 では彼女は私に何を見せようとしているのだろうか?自分が創世神にでもなるのを見届けようとでもしているのだろうか。 脈動を続けるこの場の「意識」は正に今この瞬間、自らが生まれるための器の形を模索している。 仰ぎ見られるほどの神々しさを持つべきかそれとも畏怖を集めるほどの異形の姿であるべきかを選ぼうとしているのだ。 そしてこれから生れ落ちたものが救いの神で
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー展望と願望がもたらす通過儀礼ー
君 の描く夜空の星の絵は否定の余地無くきれいなものだ…しかしそれだけだと疲れちゃうんだよな。 突然突き付けられた「個人的所感」。それは私の意識を凍り付かせるのに十分な冷たさを持ってこの場を吹き抜けた。 無論言葉の意味は分からないが、意図する事は痛いほど自分の意識を締め付ける。 やはり「財団」のコネクションの一部を背負うなどまだ荷が重かったのか? バレンシアはこの前の依頼を思い出して身震いをする…一度は啖呵を切ったものの、結局は現場の地盤に頼りきりになった事が脳裏に蘇り何日かは根城から一歩も出る事が出来なかった。 その状態で受け取った組織からの通達。正直除名からの路頭に迷う事態はとっくに覚悟していたのだが、そうでは無かったと安堵するのは早すぎたようだ。 デイヴィスの家からの伝えられた「処分」は地盤の顔役への直接の謝罪に留まったのだが、ここへきて値踏みもされずに否定を受け入れるしかないというのは受け入れ難い…バレンシアの自我は自身の尊厳を手放しかける一歩手前で必死に耐えている。 そもそも「財団」の情報が提供されたのがこの前”燎炎”の魔導師との対談の後
ギャラクシー”ジェネシス・コード”-まだ見ぬ理念、不可視の信念-
そうだな、その切り札を早く切ってみてはくれないか?私も気が長い方ではないのでね。 …それとも「紫電の女帝」とも称される貴女が無策でお出迎えなどという事は無かろうね?ミス東海林。 神社を模したその境内の中の空気がどちらを主とするか迷い揺らめいていた。 光の意識は目の前の敵性存在が放つ威圧感に炙られるがままになっている。 いや、本来ならこの涼宮の敷地である涼象宮に迷い込ませるだけで良かったはずだった。 この領域内では心象風景および意識具現化系の異能は厳しい制約の元に支配され、管理者の一部となる。 そうなればいかなる超越者といえども舞台のエキストラA並みの存在に成り下がり管理者の自我の中に溶けていくのみだ…その永劫の自意識の檻から逃げ出すことは不可能、「だった」。 光はうっすらと微笑すら浮かべる彼女の余裕に悲痛なほどの焦りを自認する。 そうか代々の涼宮の管理者があれほど毒気を抜かれた修行僧のようであったのはこの事態を予見していた、ということだったか?管理者の興味を惹き、現世に出てみようと思わせるだけの”意思”を引き出せるファクターを満たす存在がこの敷地
ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー理念と情念のコンセントレーションー
…まさかここまで融通の利かない構造だとは考えてもみなかったぞ?千頭君。 彼女は得意げにその手の中の錫杖を振るってご機嫌であることを示した。 そしてこのシステム管制室一面に展開された七色の魔導刻印は「神域」の主要ファクター全てが彼女の支配下にあることを示している。 これは目が覚めたら「あぁ、ひどい夢だったな」で済まないものだろうか? さとりは目の前の事態を飲み込むことができずに狼狽しかけるも、懸命に思考を加速させて現状把握を試みる。 幾重にも張り巡らせてあった量子暗号や各種セキュリティはあの”リアライザー”でさえ全容を把握できない情報量だった筈。 しかし彼女は自らの観測した「現実」を思いのままに改編して見せた…世界の理さえ彼女の前に跪いた、というのがこの場の事実に他ならない。 それでも極めて個人的な心象風景が一個世界の実権をまるごと掌握するなどという奇跡は人の想定できる領域を遥かに超えている。まるで自分が絵本の中の登場人物にでもなった気分だ。 そう、物語の登場人物は創作者の決めた運命に抗える権利を基本的に持たされない。 決められた運命と背負わされた
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