ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー許容の誓い、受容の証ー
- 5 日前
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そうか、「正解は”唯一無二の回答”にはなりえない」が君の持論だったね。
その一言を聞いてぼんやりとした意識の中で彼女を呼び止めた事を後悔する。
リユニの自我は限りなく希薄になっていて足元もおぼつかない。
えっと…何がどうなったんだっけ?大司教様の言葉を聞いた時に私の中の何かが弾けたようになって、それから…
突如ホワイトアウトした自己意識を持て余したリユニの様子を興味深そうに観察していた彼女は肩をすくめておどけた表情で問いかける。
何故今自分がここへ来たのかわかっていないのかな?君には受け取る資格があるはずだよ?
意思の疎通加減を少しづつ確かめるように紡がれる彼女の言葉がリユニには理解できない。
自分の日常言語が古代のそれになってしまったような奇妙な感覚。
今まで構築されていた「理想郷」の概念が紐解かれて、ありのままの「現実」へと組み変わる様を私の意識が受信している。
それと同時に暗唱できる程に読み込んだ「聖典」の記述の”意図”がリユニの意識へ流れ込み、覚えの無い記憶が脳裏に刻み込まれる。
そしてリユニの背中に現れた一対の羽が淡く光り輝いて三対の黄金の翼へと姿を変えた。
その透き通ったまばゆい光がこの意識世界を照らし出していく…そこにあったのは最早砂上の楼閣ではあり得ない「聖域」そのものの姿だ。
「祝福」を授かり、聖痕の刻まれた瞳で彼女を見据えたリユニは下すべき審判の在り方を彼女へ問う。
その姿は神の意志を代行する熾天使そのものの威厳を持ってこの場を支配している。
…彼女はリユニが行使した力の一端を見てわずかに微笑み、「扉」への道を譲り渡した。
「それで今現在起きている事に関しての説明責任を果たしてもらえるのだろうね?ミス・アリステイル。」
「それは貴女が補足している情報を確認してから、というわけにはいきませんか…?黄昏の黒魔導師様。」
ステラとヨハネスの慇懃無礼を絵に描いたようなマウントバトルは小一時間などという長さでは測れないほどに続いていた…双方の側近の抱えている心理的抑圧は彼女らの自我を爆発させる一歩手前であることは見るからに明らかだ。
このままではこの会談が何も得るもの無く終わってしまうことは確定である。
それが何を意味するのかを考えているだろう側近たちは今にもこの場から逃げ出したい自我防衛本能に抗い続けているが、人の持ちうる意志の力でそれを堰き止められないのは現状火を見るより明らかだ。
そのひりつく空気を痛いほど感じているステラは目の前にいるすまし顔の大使に対してどういう手札を切るか決めあぐねている。
導知評議会を束ねているカバラのセフィラが例外無く問題児なのは聞き及んでいたがまさか自分がここまで手を焼かされるとは想定外だったな…まだ面識のあるアンドレーエ殿を呼ぶべきだったか?
ステラは脳裏に走る意味の無い想定に悩まされながらも今現時点に引き出すべき言葉を探して思考を加速させる。それはこれからの道行きの運命を決める選択肢を提示すること。
そう、この場で一番重要なのが神や宿命に選択を委ねないという意思表示だからだ。
ステラは目の前の少女の姿をした運命の代行者へその旨を突き付ける…自らの選んだ道を違えない事への誓いの証として、だ。
それを柔らかな表情で受け止めたヨハネスは求められた審判の言葉を務めて冷静に言い渡した。

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