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ギャラクシー”フォールンマテリアル”ー自我意識境界の観測意義ー

  • 4 日前
  • 読了時間: 3分

「ふむ、不文律や”賢い選択”に疑問を持てる程度のレベルには達したか。いいだろうその案を承認しよう。


しかし「鏡面限界」に達していることが間違いないと?しかたあるまい…プランBの手配に移れ。」


リユニは目の前で交わされた会話の意味を受け止められずに自らの師に指示を仰ぐ。


だが彼女の上長である司祭は首を横へ振って視線を切った。その一挙動が示すのは暗黙の了解に従えという事のみだ。


そしてこの聖堂内の一室で交わされる言葉は正式な勅命として各部署に通達されるもの。言わば教皇庁の意思決定と同義なものとして扱われるという事だ…その意味が理解できない者はここに存在していない。


さらに「鏡面限界」という固有名称は最近度々使われるようになっていた用語のひとつ。


「自意識の認識できる事象は自分の鏡写しの姿を越える事はできない」という論証だ…それは暗に「人間は奇跡を起こすことができない」という定義を持て、との命令でもあった。


それでもリユニの意識は疑問の渦に自我を蝕まれている。黎明の女神の顕現や天界や冥界からの侵攻、かつての小さな大天使による因果の崩壊…自身が想像できる範疇を明らかに超えた事態の連続は自らに授けられていた教義ではまるで説明できない事ばかりだ。


…それでも自分は教義と示される意思決定を信じてきた。それが日々の平穏と恵みをもたらすと確信できていたからだ。


乖離しつつある理想と事実に対しても自らに与えられた試練と思い、身を尽くしてきた。


しかしこの場の責任者である筈の大司教様の示された意思はあまりにも理解しがたい唯物論に偏っている。


信徒を魔術用具のひとつとして見ているのは先ほどの言葉で決定的となった…これ以上忠誠と信義を預けることは無理だ。


リユニはあふれだす自意識の矛盾を抱えきれなくなり、ついに目の前の責任者へ言葉をかけてしまった。


「恐れながら大司教様。この度のご指示、あまりに不躾なものではないでしょうか?日々の信仰に身を捧げている信徒たちが報われないと考えます…」


リユニは言葉をそこまで吐き出した後、戦慄が自我を縛るのを自覚した。意識だけでなく魂の束縛とも思える息苦しさはあっさりと彼女の意識と思考を凍結させた。


それをにこやかに見ていた神の代行者は代替意識をリユニの体に流し込み始めた。



「それで”人形”の扱いを聞きに来た、と?私を操り人形師や傀儡使いと同列に考えるなんて不本意ね。


とてももてなす気にはなれないわ…お引き取り願えるかしら?」


「そういう事は言わないでくれパラケルスス女史。こちらも頼れるところは貴女のところしか無いのだ。


リユニが意思無き生体兵器となれば我々魔術文化圏だけの問題では無くなる…今のこの時代に魔女狩りなどされたら貴女も私もこの世界では生きて行けまい?」


バルタザールはなんとかクラリスの譲歩を引き出す為精一杯言葉を選んで語り掛けるが、その言葉が届いているかはなんとも怪しく心もとない。


教皇勅命の親書でも出せば押し切ることはできようが、この先の信用を投げ捨ててしまうのはあまりにも愚策…板挟みな思考はバルタザールの意識をますます縛り上げる。


そして彼女はクラリスへ自分の持ちうる最後のカードをついに切った。自分のアイデンティティそのものと等価なそれは正に「最後の切り札」だった。


…提示された切り札をじっくり見定めたクラリスはようやく快諾の意思を示し、対価をこの場に差し出した。


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