ギャラクシー”フォールンマテリアル”ー切望と待望の相容れないスタンスー
- 4 日前
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そう、それが歯車としての理想のカタチね。それとこの誓約の期限はいつまでだったかな?
…しかし白々しく確認してくるその口ぶりには毛ほどの悪意も感じられない。
それどころか「この場面で配慮をしてあげてる私は慈母のごとき存在」と顔に書いてあった。
愛花はそれを渋々許容してあげることにして話の先を促した。
それを好意的受容と見て取った彼女はテンションのギアをさらに上げていく。
満面の笑顔で語られる事案の経緯や自らが成した成果をここぞとばかりに列挙していくのをじっと聞いているのはさすがにキツい。しかしここで暴走されたらわが身の危険だけでは済まない…重要機密が解説付きでネットワークに放流されることにも考えねばならない。
万が一彼女の息のかかったエージェントが機密共々他勢力に寝返る事があれば、奇跡的に保たれているパワーバランスはいとも簡単に崩れて現状は殲滅戦に転がり込むだろう。
それがどれほどの甚大な災害となるかは考えるまでも無いことだ。
愛花は今更ながら丸投げされたこの場の相手役を辞退しておけば良かったと十数度目の後悔に苛まれている。それは戻ることのできない「いつもの日々」を手放したことへの迷いでもあった。
詠がイレイザーとして空へ飛び去ったあの日から回り始めた運命という分岐点…開が特別な能力に目覚めて自分の道をも変えてしまった事への戸惑いの扱いには慣れた筈だった。
しかし、目の前の「現実」に対して自分は目も当てられない程無力だ…彼女が紡ぐシナリオに踊らされるただの能力者A。台本にはきっと「そんな馬鹿な!こんなことありえない!」とかベタなセリフとともに吹き飛ばされる筋書きがしたためられている事だろう。
いや、別にそれでも構わない。役目を果たすことであいつが先に進める鍵となれるのなら。
らしくない自己犠牲を受容した愛花は彼女へ改めて覚悟を込めた視線を突き刺した。
宣戦布告ともとれる意思を嬉しそうな様子で歓迎した彼女は手にした聖典のページを開いて、宿命という名の決定事項を読み上げ始めた。
「篠崎さん…それで貴女はそれを黙って見ていたと?」
「しょうがないよ丹生さん。「アレ」に干渉するってことは世界の理にケンカを売るってことだからね。いくら私が未来の分岐をある程度観測できるといっても神様のごとく流れを支配できるというわけでは無いんだよ?」
すみれはあくまで飄々と非難を受け流す今日香に今日何度目かの激情を覚えたが、ここは黙って意思疎通と現状把握に努めることにする。選択肢を選ぶ理性が無ければ破滅はあっけなく自分の意思を食い尽くすだろうからだ。
すみれが荒ぶる感情を抑え込んだのをじっくり確認した今日香はこれまた今日何度目かの方針のすり合わせを試みる。
「とりあえず愛花ちゃんの自我が壊れたら即ゲームオーバーなわけだからリフューズ・バリアを用意しておくのは当然として、クォンタム・リープの展開も手配しておくよ。その後の後詰はお願いしてもいいよね?」
…務めて事実確認だけに絞ったその言葉に対してすみれは首肯だけを返した。
チリチリと意識を炙るこの感情が憎悪でないことを切に願いながら。

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