ギャラクシー”ジェネシス・コード”-まだ見ぬ理念、不可視の信念-
- 5 日前
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そうだな、その切り札を早く切ってみてはくれないか?私も気が長い方ではないのでね。
…それとも「紫電の女帝」とも称される貴女が無策でお出迎えなどという事は無かろうね?ミス東海林。
神社を模したその境内の中の空気がどちらを主とするか迷い揺らめいていた。
光の意識は目の前の敵性存在が放つ威圧感に炙られるがままになっている。
いや、本来ならこの涼宮の敷地である涼象宮に迷い込ませるだけで良かったはずだった。
この領域内では心象風景および意識具現化系の異能は厳しい制約の元に支配され、管理者の一部となる。
そうなればいかなる超越者といえども舞台のエキストラA並みの存在に成り下がり管理者の自我の中に溶けていくのみだ…その永劫の自意識の檻から逃げ出すことは不可能、「だった」。
光はうっすらと微笑すら浮かべる彼女の余裕に悲痛なほどの焦りを自認する。
そうか代々の涼宮の管理者があれほど毒気を抜かれた修行僧のようであったのはこの事態を予見していた、ということだったか?管理者の興味を惹き、現世に出てみようと思わせるだけの”意思”を引き出せるファクターを満たす存在がこの敷地内に足を踏み入れることを?
自問自答以外の処理が片付かない光の様子を微笑まし気に見つめていた彼女の視線がいつの間にか光の背後に向けられている。
その刹那、「全能」を具現化させうるこの場の管理者の足音が甲高く鳴り響き始めた。
「それで、現地では今も”交戦中”と。遊名さんに連絡が…つくはずないか。小石川のネットワークでの解析はどうなってる?愛美ちゃん」
「それが”どの時間軸のどの場所にも存在しない状態”という仮説が出るばっかりで何がなんだか…斎木のアナライズチームの見識は?新名さん」
新名は質問を疑問形で返されて返す言葉も出てこずに首を横へ振る…まさにお手上げといったこの場の状況は画に描いたように絶望的だ。
普段なら「少し冷静になってから検討しなおしましょう?」で済む程度の行き詰まり具合が新名と愛美の正常な判断力と思考の全てを縛っている…それは今回の事態が「予測されていた事そのものだった」事に起因している。
あの時の”そんな事は起こりえないし仮にそうなったらお手上げね。杞憂だとは思うけれど”という遊名の言葉の不吉な響きが脳裏に響いていた。
それでも「万が一の切り札」を念のため仕掛けておいたのは今時点での唯一の救いだが、あのデバイスの機能は元々”因果を元々の在り様に収束させる”という量子回路。
今回のような「世界の管理者」とかいう次元の存在に対応できるかはまるで未知数だ。
…それでも涼象宮内を観測すらできない私達にできることはそれこそ光の無事を神に祈るぐらいの事でしか無いが、それでも”最悪の事態を想定して…”などという楽な方向には逃げたくない。
それこそあの「切り札」がいつものような日常を具現化させてくれることを願うべきだ。
新名と愛美は現状においてその願いの成就が一番の奇跡だとわかっていながらも、その具現化を信じることを心に決めた。

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