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ギャラクシーif編エピソード「久遠の帰途」阿羅耶識
今抱えている数多の幻想も願望もいつかは思い出として懐かしむ日々が来るのだろう。 その時はできるだけ飾り立てることなくそれと向き合いたい。 どれだけ非現実的だ、と言われようとも、だ。 降りしきる雪は全てを覆い尽くすだけのものではないのだから。 「鹿島様の見る”景色”はその全てが現実となる。」 …いかにも眉唾もののその噂だけが事前に得られたただひとつの情報だった。 しかしそれを聞くのすら半年以上の信用を積み立てた上でようやく聞き出せたものなのだ。 だがそれを真に受けなければならない程の深刻さを彼女は伝えてくれたように思えるので、疑いもせずその場は聞き入ったが全ての疑念は晴れなかったのが正直なところだ。 そしておっかなびっくりの戦々恐々という心持ちで望んだ今日のお目通りではあったが、あのような年端もいかない少女がかの女神顕現のときの陣頭指揮を執り、”宝物庫”の件を収め、今回の事案の主要戦略を組むと言う。 まるで狐につままれた気分なのは偽らざるところだ。 それにメインの戦力にはあの八剣の末娘を引き続き据えるという。 何でも古代の神々すら叩き伏せるとの触れ
ギャラクシーifエピソード編「久遠の帰途」WIZ-DOM
「魔導の道を究めるには血の中の蓄積こそが不可欠な要因であり、唯一無二の資格である。 血脈の繋がり無き者に挑む資格無し」と説いて憚らなかったかの教授が満足にまともな勝負をさせてもらえず極東の島国で消息を絶った、という情報が学院中を駆け巡って久しい時が経っていた。 カバラのピナーのセフィラでもあった彼女の失踪は学院生だけでなく教授陣にも少なくない動揺を与えていた。 そう、「理解」を司る天使の加護を受け、その力の一端を従える事のできた優れた魔術師であった彼女。 その彼女が名も知らぬ土地の戦いにおいてレギュレーションも把握できず無様に敗走したなどという情報を始めは誰も信じなかった。 それでも現地に赴いた捜索チームは塵ひとつ残っていなかった彼女の工房跡地を目の当たりにして思ったのだ。 魔導の道を侮っていたのは他でもない我々のほうだったのだ、と。 「スウェーデンボルグさん。この前の評議会でのレポート大変興味深いものだったわ。これからもこの分野の牽引役をお願いするわね。」 ジリアンはかすかな笑みをたたえてレミリアを賞賛した。毎度言葉足らずで誤解を与えてしまうの
ギャラクシーif編エピソード「久遠の帰途」EGO
「”天使”の崩壊による”摂理”の瓦解…?ごめんなさいそういう方面には疎いものだから基礎的な事から教えてもらえませんか?」 突如千里行きつけのカフェに呼び出された愛花は事態が把握できずに戸惑いのただ中にいた。 「そう?じゃあ因果律とか歴史の抑止力、修正力とかの分野の話になるけどいい?」 …ますますわからない。とりあえず思考整理が終わってから聞かせてもらいたい。 「つまり英雄という存在は歴史上の役目を終えたら強制的に退場させられる。どんな加護や異能を持っていてもそれは変わらないみたいね。ここまではいいかしら。」 まるで話を聞いてもらえない。やんわりと話を止めて帰ろうかと愛花が腰を上げようとした、その時。 「同じ原理で人間も”天使”化する事で人間社会にいられなくなる。真代詠ちゃんだっけ?覚醒した彼女が空の向こうへ飛び去ったのを貴女も見たはずよね?」 愛花はぎょっとして千里の瞳を凝視する。何故今その話が出てくるのか? 千里はその反応を見て満足したように頷き、頼んであったメープルラテを一口飲んで愛花の目を見つめ返す。 「そう、人間がイレイザー化するプロセス
ギャラクシーif編エピソード「久遠の帰途」序章
エスポワール・ドゥ・セレーネ。 神秘の月光のみが映し出すその地は何人も寄せ付けぬ未踏の聖域だった。 だがかの地の管理者達との何千年にも渡る交渉により、神と眷属そして彼らと親しき者たちが集う公用地となったのが始まりと伝えられている。 そして神は選んだ人間達に自らの権能を譲り渡し神界へ去っていった。 その際人は譲られた力の器として誓約を掲げたという。 ある者は家族との絆に、ある者はこの世の理への帰属に、それぞれ誓いを建てたのだ。 そしてその力はその象徴を象った異能として備わり、神話の礎となった。 そうして莫大な力を受け継いだ者たちはさまざまな地で創始者として歴史を始めていった。 それぞれが人々と共に無邪気に夢を追いかけたに違いなかった… そう、通り過ぎた日々の記憶と足跡と共に。
ギャラクシーif編エピソード「夢幻の誓約」 WIZ-DOM
「夢幻の誓約」WIZ-DOM 「市原君。君の術式理論の合理性と美しさは認めよう。 しかし、適用できるモデルケースがあまりにも少ないのはどういうことだね?」 「…それは有用性の点で疑わしい、ということでしょうか。」 麻奈歌は投げかけられた言葉の意図を確認すべく、あえて疑問を示す言葉を返した。 「そういうことではない。だが、仮に君の先天的ファクターと術式の親和性を持ってしか結果が出せないというのならば汎用術として成立させるのは難しいのではないかね。」 意図して重ねられたその言霊は麻奈歌の魔女としての資質を問うものではなかった…それでも彼女の意識を揺さぶる事は可能だった。 動揺していないと自身に示すにはあまりに足場が脆い。 彼女の意識は今にも奈落に吸い込まれそうな深度の闇を内包しているのだ。 黙り込むしかできない麻奈歌に教授は最後通告を示して話を締めようと口を開きかけたその時。 場違いな程涼やかな風が吹き抜けて、教授は明らかに機嫌を傾けて視線を写す。 「どうしたのかな?教授。あなたのいつもの決めセリフを聞かせてくれないか?」 ...
ギャラクシーif編エピソード「夢幻の誓約」 阿羅耶識
「それで厳島殿からの返答は?」 「それが”内政不干渉”を今までどおり続けると…」 「一体どういう事になっている!まさかかの姫も同じ意見だというのか?とても信じられぬ!」 …ざわつきが収まらない議場はもはや神域の態を成してはいない。 栞はかつての女神顕現の時の事を思い出して一層憂鬱な気持ちを持て余している。 さすがに今回は歌いだそうとか彼女に丸投げだとかは考えないことにしよう。今度の問題は戦陣を組むことでは無いはずだから…。 そう考えを纏めようと思案に沈もうとしたところ、矛先が自分に向いていることに気づいた。 「鹿島様、もう一度改めてお考えを伺えますか…?」 今回は話が進むのが早いな。栞はある程度混乱が収まってから差し水をしようと考えていた為に導入部分までしか話を考えていなかったのだが、その部分はいま必要とされていないようだ。この場の議長も期待を込めて栞の一挙手一投足に注目していた。 「そうね…まずは調査資料の「科学的解析」から始めましょうか?」 ざわつきが一層大きくなる。てっきり呪術的見解や魔術的見識からの解説を求められると確信して
ギャラクシーif編エピソード「四季の肖像」イレイザー
非日常というのはたとえ扉を開けなくてもいつしか染み込んでくるものだ。そして「日常」と重なりあい、空気のごとく当たり前のものになっていく。様々な基準もそれに伴い調整されていくのだ。 …望む望まないに関わらず。 「事前に報告はあったのか?」 「はい、いえ、その…」 「報告はあったのかと聞いている!」 ミカエルは激昂し言葉を荒らげた。彼女の存在感は加速度的に圧迫感を増して見る者の意識を焦がし始める。矢面に立った士官はもはや呼吸もままならず目の焦点も合っていない。卒倒するのも時間の問題だった。 ミカエルは士官の醜態に一瞥を向けると先程入ったばかりのデータ群に向き直る。 それはダイアグラムの記録媒体が流出して我ら天使の力がこの惑星の生命に取り込まれているらしいと読み取れるものだ。 以前戦った異能力者の特異個体の事ではなくこちら側で投入した自律戦闘ユニットとも違う存在らしい。その上前に「神」と呼称されていた概念存在とも異なるようだ…。 雲を掴むようなどという苛立たしい状況の中、ミカエルは懸命に「現実」を組み立て始める。それは黙示録を纏めようとする
ギャラクシーif編エピソード「四季の肖像」極星帝国
可能性の蕾が開いていくさまは美しい。 未来への希望と生命の脈動に満ち溢れるそれを愛でるのに何の制約が必要だろうか。いやしかし可能性の花を育てる土壌を創り上げるのには理路整然とした論理も不可欠だ。難しいものだな…。 執務用の通信魔導器は最近昼夜を問わず稼動を続け、情報の海を形作っていた。 未処理の書類が渦巻くその様子は時間と日常を際限なく喰らい尽くす濁流さながらだ。 「どうした事ですシルマリル殿。この状況は。」 「エイラですか。今は手を空ける余裕は無いので後にしてくれませんか?」 いつもの楚々とした佇まいからは想像できない応対に戸惑いを感じたエイラ・ロウは思わず手助けを申し出ようとしたが思いとどまった。その方が手間だろうからだ。 そこでエイラは気を取り直して自分の職務に立ち返る事にする。 「改めて十将軍筆頭のからの伝令がございます。魔導開発執務官「エルヴン・ユナイト」シルマリル殿。」 帝国軍統括のレイナの名前が出たことでシルマリルは手を止めて向き直る。 「アークトゥルス様からお達し…何の危急の事態かしら?」 「なんでも魔導でも呪法
ギャラクシーif編エピソード「四季の肖像」ダークロア
ざわめいていた木々は静まり返り、静寂という名の沈黙を続けていた。 新月の夜は照らされるものも無く森は息を潜めて生命の鼓動を見守っている。まるでそれは因果の秩序が保たれているかどうかを視ている神々の審理の時間のようだった。 「ネモノワさんはこの事態をどう見ているんですの?」 「聞きたい事があるならそこから話せ…ヴァンパイア。」 「なんとも連れないのですね。私にはクレメンティーナというお気に入りの名前がありましてよ?」 「貴様の名などどうでもいい。この根城があるテリトリーまで入ってきた理由は何だ…?」 切り倒された大樹の跡に座しているネモノワの放つ闇の気配がより暗く重いものになる。明らかによくないものを呼ぶ気配が漂い始めた。 「あらあら私は貴女と事を構えよう等とは微塵も思っていませんのに。その瘴気を収めて下さるかしら?」クレメンティーナは呼びかける。 そう言いながらも周囲の霧が途端に濃くなり人型に姿を変えていく。五体、十体、十五体…まだまだ無数に増え続ける。瘴気と霧が混じり合い空気の密度がより息苦しいほど重くなる。 これだから闇の眷属
ギャラクシーif編エピソード「四季の肖像」WIZ-DOM
地図が読めないだけで目的地への到達が絶望的になるとは不親切では無いのか。最初から最後までお姫様エスコートを要求しているわけではないのだけれど。 「いや結局同じことなんじゃねえ?お前の周りにいる人間たちにとってはさ。」 「姫、その言葉使いは直せないものなの?貴女はだいぶ格の高い悪魔なのでしょう。魔神姫アシュタルテー。」 「慇懃無礼トークが様になってきたおまえに言われたくはないがな。真理亜。」 毎度の考えを見透かした態度が気に障った真理亜だったが、調べ物を中断して向き直ることはしなかった。無理を言って学園の資料室を開けてもらったこの貴重な時間を無駄にしたくなかったからだ。 「悪魔召喚師”真理亜・ファウスト”」、それが彼女の通り名だ。気に入っていた幼い頃の本名を捨てて久しい。しかし今は関係者に認知度が高い方が重要だ…それに忌み名を知られていては都合が悪いことも多々ある。自身の在り方にも影響を及ぼす場合すらあるのだから。 意識を切り替えて目の前の鉱石らしきものを見つめなおす。血のごとく真紅の光の中に紫がかった輝きが混じっている。人工物とも自然
ギャラクシーif編エピソード「四季の肖像」阿羅耶識
とめどなく荒ぶる情動や感情は時にあらゆる物事を飲み込む魔物となる。 自我や意識のコントロールを受けないそれは思わしくない事態を呼ぶこともざらだ。しかしそれ無くして人の生は成り立たないだろう…ままならないものだ。 「だからこの国自体を丸ごと我等の結界でくくってしまえと言ったのです!」 ヒステリックにご意見番たる術師は思いの丈をぶちまけ始めた。 そういう問題ではないとか、この国だけの危機ではないとかなだめるも頑として聞き入れない。 古参の重鎮がこの有様では八剣の家も遠からず崩壊するだろう。厳島や鹿島に泣きつくしかないのかもしれない。いやむしろ美春様や栞様に纏めてもらったほうがよほど…という空気が充満していた。 それに前線からの情報によれば死をも我がものとする魔王や因果を捻じ曲げる超越者だのがそこまで来ているというのだ。それでいて今までの神代の神格も相手にしなければならない。内輪もめしている時間など無いのは誰しもわかっていた…しかし救世主は都合よく現れてはくれないのだ。 いつまでも守護神霊やうめばかりに頼っているわけにはいかないのは明らかだが一体どう
ギャラクシーif編エピソード「四季の肖像」EGO 開パート
めぐり合わせという の も案外バカにできないのかもしれない。 運命や偶然 の 隔たり無く起きる事象 の 全ては必然へと繋がり因果 の 流れを育む。そして選択肢が生まれ未来が紡がれる。 つまり「選ぶ」という事自体が運命的であると信じたいのだ…。 「開、開起きてる?」 「…」 「開ってば。出席番号18番真代開くーん?」 「ん、愛花か。何だこんな時に…」 「何だじゃないでしょ!この前斎木の本社で聞いた事を話してくれるって約束だったじゃない。お昼休みもう半分しかない…ほら早く!」 騒がしいやつだなと顔に出すとまた機嫌を損ねるので平静を保っている感を見せておく。そう、マインドブレイカーとかいう能力についての事だったか。なんでも人の「殻」を壊して能力を目覚めさせるとか。 何とも信じ難い話ではあるが覚醒の瞬間を二度も目の当たりにしては受け入れざるを得ないだろう。 本当に自分の内にそのような力があるのなら人の因果や人生そのものを変質させてしまうものだ。とても俺一人で背負えるものじゃないし愛花や詠の未来をも左右する問題だ。逃げるわけにはいかない。 .
ギャラクシーif編エピソード「四季の肖像」EGO
「できる限りリスクをカットしてコストパフォーマンスを最大化することが重要だと思うの。」 そう力説する彼女に対してうんうん、そうだねと応じてあげるのが私の毎日の大事なルーティーンだった。 たとえそれの範囲が絵空事や机上の空論のレベルに至ったとしても構わなかった。 それらはいつもの日々を紡いでくれていたかけがえのないものだったのだから。 「これらの案件、どう思う?風花。」 「そうですね…判断材料がまだ少ないのでなんとも言えないのが正直なところですけど顕在化しているのは確実ではないでしょうか。」 「そう、現場に直接赴いた貴女がそう見るなら事態はより深刻なようね。」 真純は考えを纏めるのに数分の逡巡を必要とした。 なにせ「箱庭」と魔王、それに神に天使と悪魔だ。今までの状況に加えて神学校初等部の教材の中身がそのまま具現化したような今の事態を飲み込むのは難しい。 それでも人員配分を任されている一色真純は判断を遅らせられないポストにいる。 早々に決断を下さなければならなかった。 真純は人材リストと数少ない報告書を見直し決断を下した。相手はこの世界の
ギャラクシーif編エピソード「四季の肖像」序章
四季の名を冠する世界的に名の知れたホテルのスイートルームが全て貸し切られたあの日、一日中表現できようもない恐怖に体中が漬かっていたようだった、と「生存者」は語ったそうだ。 時を刈り取り死の匂いを何重にも纏うその存在。地母竜をも呼び寄せる魔王にしてかのサン・ジェルマン伯爵の親しき隣人…そう称されるその正体が命を産み育む女性だというのは笑えないジョークだと嘲る者もかつてはいた。だが、そういった者達が冥府行き直行便を集団チャーターしたことは言うまでも無い。 そして話題として取り上げること自体が死を呼び寄せる儀式魔術とみなされるようになるまで時間はかからなかったようだ。もっとも噂の一次情報者が生存しているケースが聞かれないため確かな話ではないのだが。 そういった背景を持つ彼女ではあったが、最近面白い噂にご執心だった。 なんでもオーバーテクノロジー装備のメイド軍団がいるだの宇宙の果てからやってきた天使が行軍しただの神話の神々が具現化しただのといった事が極東の島国で集中的に起こっているというのだ。 初めてその情報を届けた使用人は既に死出の旅に旅立たせてやった
ギャラクシーifエピソード編「夢幻の誓約」WIZ-DOM
「 夢幻の誓約 」 WIZ-DOM 「市原君。君 の 術式理論 の 合理性と美しさは認めよう。 しかし、適用できるモデルケースがあまりにも少ない の はどういうことだね?」 「…それは有用性 の 点で疑わしい、ということでしょうか。」 麻奈歌は投げかけられた言葉 の 意図を確認すべく、あえて疑問を示す言葉を返した。 「そういうことではない。だが、仮に君の先天的ファクターと術式の親和性を持ってしか結果が出せないというのならば汎用術として成立させるのは難しいのではないかね。」 意図して重ねられたその言霊は麻奈歌の魔女としての資質を問うものではなかった…それでも彼女の意識を揺さぶる事は可能だった。 動揺していないと自身に示すにはあまりに足場が脆い。 彼女の意識は今にも奈落に吸い込まれそうな深度の闇を内包しているのだ。 黙り込むしかできない麻奈歌に教授は最後通告を示して話を締めようと口を開きかけたその時。 場違いな程涼やかな風が吹き抜けて、教授は明らかに機嫌を傾けて視線を移す。 「どうしたのかな?教授。あなたのいつもの決めセリフを聞かせてくれ
ギャラクシーif編エピソード 「夢幻の誓約」イレイザー
夢か現か の 境目など誰もわかりはしない。 …大体 の 場合現が夢 の 器となり夢が現 の 器となってその姿を現すものだからだ。 ゆえに表裏一体 の どちらか一方だけが”本物”ということもありえない。片方が人 の 域を逸脱した存在だとしても、だ。 それを天使と呼ぶか悪魔と呼ぶかは個人次第だろうが、どちらにせよこの現世に写された幻像にであることには変わりない。 それは刹那に込められた永遠のごとく。 …統制体とは随分大仰な名づけをしたものだな。 一世一代の傑作の集大成と確信してお披露目したものに下された評価はただその一言であった。 そこにこぎつけるまでの苦労や艱難辛苦、葛藤や乗り越えてきた課題達に関する記憶もこの場に泡影のごとく溶けていくようだった。 その場に居合わせていたエルゲディエル様はそれはあんまりではないかと詰め寄ってくれたが、その場での評価は我こそが唯一無二の現実と言わんばかりに揺らぐことすら無い。 熾炎の翼の大天使はこちらに一瞥を向けるとこの場を立ち去った。その後ろ姿が何を要求しているかは誰の目にも明らかだった。 ...
ギャラクシーif編エピソード 「夢幻の誓約」極星帝国
”これは「正しいロジック の 解法」を求めているのではない の だろう。” 「仕様書」 の 解読に取り掛かってすでに9ヶ月。 言葉 の 意図を手探りで探って曖昧な定義を組み直して再構成。果て の 見えないその作業をやり続けて現状わかっているのはただそれだけだった。 この先に進むには”原典”と呼ばれる「仕様書」の原本が必要なようだ。…ただそれが今の時代の文化水準で読めるかどうかはわからない。今ある読みやすく翻訳された写本の解読でさえ満足にできていない状況を思えば、言葉による意思疎通のできない相手の方がまだマシだと思える。皮肉なものだ。 それに気力と精神力、意思の力はすでに限界を超えていて生命維持に必要な分しか残っていない。 迷子と遭難の区別がつかない今、意識が急に途切れて息絶えるヴィジョンだけが現実味を増している。 このままでは足跡を残す事もできずやってきた事全てが水泡に帰すだろう…確信できる観測だ。 彼らはそんな危機的状況においても神に祈ることをせずに己が理念を追求し続けることをやめないでいた。 「それも全て陛下の意向に沿うものだととして
ギャラクシーif編エピソード 「夢幻の誓約」EGO
「並列次元 の 同位体だからといって同一人物とはいえない、か。当然 の 見解ね。」 「いや…識別記号無し解析コードも手探り の 状態で出された結論を鵜呑みにするのはどうかと思うけど?…うんごめん聞き流して。」 思わぬ方向から正論を突っ込まれて美奈は不機嫌を滲ませた。 平日昼間の斎木インダストリー展望ラウンジに集まった面々は各々が持ち寄った情報を吟味する事から始めた。 用意されたアフタヌーンティーセットが置いてけぼりにされて小一時間経っている…しかし進捗は思わしくない。 適当に放り出された役員用パスが自分の存在を示したそうにしているのが印象的だ。 「そういう新名は遊名さんから何を聞いて…うん後でゆっくり聞くよ。」 美奈は自分より色濃いあからさまな不機嫌顔を直視できず視線を手元の資料に戻す…さっきからこの応酬を何往復したかわからない。今日は切り上げておいた方がいいかも知れなかった。しかし役目を放り出すには早すぎる。 今回の案件である件の宝物庫の情報が下りてきたのはほんの2,3日前であり見通しも立たない状態で丸投げされた為、情報のアウトラインだ
ギャラクシーif編エピソード 「夢幻の誓約」序章
古代 の 彼方に消え去った至宝 の 数々がかつて納められていた場所。改めて の 説明が不要な神話が今も眠る古代王 の 墓所…そして様々な英雄達 の 起源が刻まれた星 の 記憶を管理するポータルとして の 機能をも擁する絶大な優先度で封じられた棺。 …様々な側面であらゆる根源を縛るその領域は、支配者たるかの王がこの世から旅立った後も稼動を続けてこの世界の意思決定機関のごとく振舞う事をやめずにいる。 様々な時代の皇帝、教皇、神祇庁の長たちが魅入られ掌握を試みた歴史は深く、未だに魔術界や陰陽界に苦い記憶を刷り込んでいた。 それでも「私ならば、俺ならば」と挑む”自殺志願者”は後を絶たない。そして「もしかしたら自分が」との微かな希望はまともな展望や客観視を焼き尽くして志願者達を際限なく飲み込むのだ。それを哀れと思うのぐらいは許されてしかるべきだろう…。その醜態が語り継がれるのはむしろ慈悲でさえある筈だ。 しかし日が沈み月が昇る事と同じ様に今日もその領域は勇者志望の犠牲者を飲み込む。 歴史を紡ぎ歴史を残すのが勤めである筈の当代の記録者もいつしか夢を見て
ギャラクシーif編エピソード 「連葉の庭園」イレイザー
私が得てきたものは一体どんなものだっただろう。 詠は天使となった事で拡張された自分 の 意識が限りなく広がっていくのを感じていた…。それは水平線に向かって手を伸ばして掴み取ろうとする感覚に似ていた。 人としての日常、天使としての俯瞰視界、世界の摂理やさまざまな因果の繋がりが脳裏に現れては消えてゆく。それは人の身では受け止めきれない膨大な情報の波。少しでも緩みあらば詠の意識を押し流そうと荒れ狂うそれは抗うことのできない運命という名の超常の力なのだろう。 しかし詠は今にも虚空に追い落とされそうな「人としての意識」を離そうとはしない。もう戻らない日々の思い出にすがりつくように。 「バラキエル様、もう止めた方がよろしいかと。バラキエル様?」 「私は私のままでいたいだけなの。それはそんなにいけないことなの…?」 明らかに噛み合わない言葉のやり取りが艦内のブリッジに響いていた。 傍仕えの参謀はただうろたえるばかりだ。どうにもならなかった。 ミカエルは苦しみの根源を頑として手放さない同胞の姿をただ冷ややかに見つめていた。
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