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ストーリー
ギャラクシー”アナザーデイズ”ー論理の揺り篭、倫理の福音ー
天使は神に祈らない。 …その一点のみが彼女の知りうる真実であり続けた。 許容も拒絶もまるで意味は無く、あらかじめ決められた正しさを粛々とこなすだけの機械人形。 それが「御使い」と呼ばれて尊ばれる存在に対しての偽らざる認識だった。 子供の頃だいぶ読み込んだ聖典にはあまりにも神々しく描かれていた善の象徴。 「それ」に焼き払われた郷里と思い出は決して戻らないもの…現実という言葉の意味を胸に焼き付けられたその日以前の記憶はすでに無い。 それでも教会に忠誠を誓う道を選んだのは正義や善という言葉の意味を確かめるだけに由来しない。 そう、せめてどれほどの論理が世界を動かしているのか知らなければならなかった… いつも夢に描いていた未来を焼き焦がした対価として。 「…小石川!聞いているのか小石川!」 彩河は教師の呼びかけにまるで応じずに空の観測をし続ける…今更高校に通うというのも殊更ダルいものだな。率直な感想だけが脳裏に流れるのを感じる。 こんな事ならあの斎木のお嬢様に口利きをしてもらってあの私立のお嬢様校に編入させてもらうべきだったか。 でもあんな淑女然とした制
ギャラクシー”アナザーデイズ”ー見かねた愚考と「理知的判断」-
ふむ、そういうことならひとつゲームをしましょう…貴女が持っているものを見せてもらうわ。 いつの間にか用意されていたカード一組。 どこにでもあるトランプにしか見えないそれを手馴れた手つきでシャッフルして目の前に置いた彼女はさも面白いものを見つけたかのような瞳で私の顔を覗き込んでいる。 そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫。ルールは簡単…一枚ずつ上から順番にカードを引いていってスペードのエースを先に引いた方の勝ち。簡単でしょう?貴女が勝てば聞きたいことをなんでもひとつだけ答えてあげるわ。 そう告げた後に当然のごとく先攻を勧めてくる。ああ、知っているぞこれはただの運試しでは無い。 彼女にしかわからない「必勝法」が次のターンでこの場を締めるやつだ。 そしてそれはマジシャン的なトリックでも意識干渉系の異能を使ったアンフェアな騙し討ちでもない事を私は知っている。 その手の内は先代が一番好んだ勝負の切り札…同じ一門で知る者はいない秘伝であるはずだ。 わざわざそれを使って「勝負」をしようとは悪趣味にも程がある。彼女がこの場で告げたいことも想像がついた。...
ギャラクシー”アナザーデイズ”ー幻想の閃き、夢想の煌きー
好奇心猫を殺す。 絶対的カリスマ主導のトップダウン管理が過剰に神聖視されていた時代の言葉だ。 世の中の矛盾も歪みも全ては問題なく包み隠され、現実という名の共有認識は永らく不可侵の神話として人々の日常を支配していたのだ。 そしてその大前提あってこそ現状を打ち倒そうとする事にモチベーションが上がったものである。 おっとこの先が本当に聞きたいかね?お嬢さん。 …老人はそこまでを熱を帯びて語った後、タバコをふかして遠い目をして虚空を見つめる。 語り部が一息ついたことにほっとしつつもさらなる現実譚があと数時間続くだろうと覚悟した彼女は出されていたお茶請けに手を伸ばして長期戦に備えた。 まさか今の時代にレッドオーシャン内生存論が必要になるなど誰も思っていなかっただろう…このツテを教えてくれた同僚には後でなにかしらのお礼を考えておこう。運だけではチャンスは回ってこないものだ。 そして彼女は恍惚とした表情で神話を護っていた時代の事を語り始めた老人の話の世界へ飛び込んでいった。 「それで今回の事案の為のキャストは決まったわけ?」 アイギスは積もり積もった苛立ちを懸
ギャラクシー”アナザーデイズ”ー俯瞰する海と不可侵の意思ー
現実を受け入れるということは自ら檻の中に閉じこもる事と同義だ。 そう言い残して皆の下を去った彼女の消息は未だにしれない。 作りかけの楽園は求められた機能を持たない事は勿論のこと、内部の日常すらまともに整備されていない有様だ…そして残された夢の残骸は昔夢見たひと時の栄華を過剰に主張している。 あったかどうか知れない黄金期の話は今になっても関わった者の中に在りし日の幻像を崇めていた。 …この状況になって初めて彼女が求めた理想のカタチが日々の必需品であったと感じうるのは皮肉以外の何者でもなかっただろう。 それでも日々を過ごす為に皆はそれぞれの理想を持ち寄り始めた… 彼女が歯車としての永劫を受け入れたのを誰もが知らぬままに。 「救いを受け入れるか、それとも自らの意識内で皆の苦しみを受け止めるか。選ぶのは貴女ですよ?ミス・ヴィルノア。」 強烈な既視感を焼き付けられたフィンセントは眩暈をこらえて思考を組みなおす。 …たかだか300ページ程度の容量では望む世界の摂理を設定しきるのは無理だった。 それでも最低限の日常を営める概念質量はあった筈だ。具現化させた日々
ギャラクシー”アナザーデイズ”ー臆せぬ魔神と熟知の王ー
毎日欠かさず綴り続けた黒歴史日記。 その中では現実の縛りや無力感の類はまるで無く、自分のイメージどおりのハッピーエンドが量産されていた。 努力は必ず実を結び、善行を積めば必然的に例外なく報われる世界。この世の楽園、その理想像だけが毎夜広がっていた…勧善懲悪という言葉が裸足で逃げ出すほどの綺麗で無欠なその在りようは彼女の意識と自我の拠り所であったに違いなかった。 そしてその世界は肥大化を続けて彼女の”リアル”を侵食するに至る。 創造者の意識を糧として外に這い出た理想像は周囲の理不尽や不都合を丸呑みしてついには「現実感」をも我が物として自分の支配下に置くに至った。 さらに彼女の望まぬ因果を紡ぎ始めて物理的異界を形成するようになった「それ」は周囲一帯の因果も決定する程に強大なものとなっていった…それが人々の意思決定に干渉するようになるのは必然の帰結だっただろう。 いずれその「世界」そのものが”神”と認識されるのもまた自然な事であったのだ。 「…それで、話っていうのは例の”神の私見”についてだったよね?ミス・アリステイル。」 「プライベートの場でそう呼ば
ギャラクシー”アナザーデイズ”ー灼かれた野心と願望組成ー
「”幸せな結末”…?確かにあるに越した事はないが、エンディング後の事はキッチリ計画を組んでおくんだぞ。」彼女はそう言い残して前線を後にした。 シンデレラのお后修行とか公務回りに特段興味は持てないけれどハッピーエンドの後にも人生はある。 英雄譚なら悲劇の没落劇で締めればいいが、人々の日常を描いた物語にその手は通用しない。 どこまでも日々の戦いの準備とコミュニティの存在理由を生産し続けなければならないのは”脚本家”や”シナリオライター”の宿命である。 そう、例え自分が倒れたとしても命脈を継ぐ為のコネクション基盤は生かし続けねばならない…自分や仲間達の歩んできた道が無駄では無かったと自認する、ただそれだけの為に。 「…この”お気持ち表明文”をわざわざこの場で出した事にはきちんと納得できる理由があるのでしょうな?ミス三条。」 意識と知覚器官そのものを凍結するようなこの場の空気にちゃんと酸素は含まれているのかどうかは怪しいところであった…それにしても息が詰まる事この上ない。 この議場に巣くった魑魅魍魎共は己の身をも灼きそうな野心を隠そうともせず、隙あらば朱
ギャラクシー”アナザーデイズ”ー至高の夢想、理想の幻像ー
片っ端から必須要素を盛り込んでも理想像が組みあがらないのは珍しいことではない。 元々到達していない領域を想像して組み立てるのが「理想像」であるからだ。 遥か昔の「創設者」はそう声高に叫んで奮起を促したそうだ。 しかし、そもそも辿りつきたい理想やその原型がはっきりしているのならば、後は道と手段を探す段階であるだろう…それでも「導きのままに歩を進めれば必ず到達できる」などという話にどれだけの信憑性があるのかは別の話だし、好みの未来を選べる手札に恵まれた者に限った”救い”にどれほどの存在意義があるのかははなはだ疑問だ。 …しかし目の前の”救い”に価値を見出せる者が目の前の道を見つけられるのは世の常なのかもしれない。 例えその実体が蜃気楼のような砂の城だったとしても。 「自分の手札だけで”勝利条件”が満たせるのが仕様なら誰も苦労なんてしないって話よ?」 …”意識高い系”の言葉が好きな彼女の話は今日も周波数が高めである。 ルシオラは盟友の語る私見論を右から左へ聞き流しつつ考える。 この広大なルォノヴァーラ家の敷地は意識と自我を縛る特殊な結界が何重にも張って
ギャラクシー”アナザーデイズ” ー思考と感性の二律背反ー
「”成功”をプラスのファクターに変えられるのもまた一種の才能である。」 …その趣旨の論文を読み終わって悲しい気分が自我を侵食するのを感じた。 待っているはずだった華々しい未来のヴィジョンに霞がかかったようになってどれほどの時間を過ごしたのかは想像に難くなかった。 彼女が示した指針はまったくの空想であったのか…?そう結論づけるには早いはず。 そう、希望の種火は思っていた程小さくはなかったのだから。 「ふむ、湯上谷さんは今でもこの素案のままいけるというわけね?」 真奈美は予想通りのところを突っ込まれたのにもかかわらず、その言葉の前に沈黙を余儀なくされた。 イマジナリー・リフレクターの二つ名で最前線の”現実”を背負っていた歴戦の勇士である彼女も、この場においてはただの一エージェントでしかない。舞のように顔パスで上層部と渡り合える貫目はいまだ足りていない。 そして現状分析や戦略構築案はあらかた提示した…当の昔に切り札は切っていた。 それでも意思決定の場においてはこの有様だ。いつまでも小娘一人に戦線が維持できるわけないだろう、との見解はもっともだが、遺産は
ギャラクシーif編エピソード「未踏の見識」極星帝国
人が夢から覚めるときは一瞬だ。 しかしどれほど輝かしい未来像も信じた成功への道程も儚く霧散するのがこの世の摂理…と見限るのは悲しいものだ。 だからこそ夢を見続けられるのは類まれで特異の才能なのであろう。 そしてそれを受け止める器を創り出せた者、出会えた者はその時点で奇跡を具現化させているのだ。 そもそも神ならぬ身でひとつの世界を生み出そうという試みが奇跡的であるのだから。 「…それで黄道宮の巫女達はもう招集を終えたのか?境界門の拡充は次の新月の夜を予定している筈。 全ての要素はとっくに揃っていなければならない時期だ…わかっていような?」 「はい、現地にはラウザ様が出て呪力や儀式の準備等の指揮を執っているところですね。」 この慎重を期すべきときにあのディーテアリアの力を当てにしなければならないとはなんとも歯がゆいものだ…。 レイナは歯噛みをして苦々しい思いを何とか飲み込む。結局のところ異界に干渉する為の力をこれ以上行使するには奴の能力がなければ成り立たない事は明白であった。人柱も無限に調達できるわけではないし、ミクトやアルヘナにこれ以上の負担を強い
ギャラクシーif編エピソード「未踏の見識」イレイザー
物事は「客観的観測」で得られる要素によって決定されるもの…そう信じていた時期も確かにあった。 しかし日常は人々の自我認識と意思、意識のベクトルで動く事が多い。 その積み重ねで組みあがったプラットフォームを「現実」という名で呼ぶならば、客観的という言葉を信仰の対象にするのは危険ではないのか…?考えること自体が沼に自分を沈ませているように感じる。 それでも割り切れない非合理性で日々は進んでいく。神がサイコロを振る余地の無い論理性を持って。 「…あの惑星に広まったダイアグラムから解析できないデータ群が日々検出されている?現状分析がおぼつかないので時間がほしい…?報告は具体的にと日々言っているはずだが。」 ミカエルは日常的に刻まれるようになった眉間の皺に指を当てて激情がせりあがってくるのを抑えている。 いつもは愚痴を聞いてくれるエルゲディエルも現場対応で追われていてこの場には居てくれない。 自分が爆発したら止めてくれる者はいない。 そもそもあの惑星には文明のレベルに反して非科学的因子が過剰だ…資料として現地の神話を読んでみたものの、自然のサイクルを無視し
ギャラクシーif編エピソード「未踏の見識」阿羅耶識
聖殿への捧げものはその大半が死蔵されたままでいた。 未来への道筋は閉ざされたままで、その先を夢想する事も禁忌とされる有様…希望は現実という名目によって棚上げされたままだ。 それでも祝詞の言葉は延々と紡がれ続ける。それを受け止めて、形と成してくれる「創立者」が現れてくれることを信じて。 「毒にならないからといって薬になるわけではないということ。わざわざ確認することでもないはずよね?」 厳島の正殿に響いたその一言はこの場の気温をさらに引き下げた…天然の氷室のごとき冷ややかさが意識のみでなく体の隅々を凍てつかせるようであった。 いつにもまして苛立っていた美晴は目の前にひざまづいて頭を垂れる一人の少女に場を収めるにふさわしい釈明を求める気でいた。不可能な事では無い筈だ…前線で獅子奮迅の働きを見せる、その身に戦神を宿した彼女は答えを持ち合わせているからこそ謁見を申し出たのだろうから。 それでも彼女はいつまでも口を開こうとはしない。 その在りようは戦場における皆の精神的支柱、不動明王そのものの姿である。しかし今求められているのは防衛戦の戦果では無い。それがわ
ギャラクシーif編エピソード 「未踏の見識」ダークロア
私の見てきた歴史の源流は、最初の一滴を受け止める器ができた時から始まるものだった。 そう初めの一滴が石を穿ち始める要因はさまざまである。 それはちょっとした思いつきを実際にやってみようとする時であったかもしれない。 偶然の一言がきっかけの試みであったかもしれない。 もしくは神の気まぐれのごとき僥倖が巡り合わせた発見であったかもしれない…。 そこから世界の元となった器は池のようなサイズから湖のようなスケールのものとなり大河を生み出していく。 その「水量」が増せばそこに生命が生まれ日常が形成されて歴史が始まる。 やがて芽吹いた時間の積み重ねは現実という名で呼ばれるようになるのだ。 …その一連の流れそのものが世界そのものの意思であるのかどうかはわからないけれど。 「そう、「扉が開く瞬間」っていうのは認知できないものだよ。そういうのってしかるべき結果が出始めてから思い返して気づくものじゃない?」 …たった一度の邂逅が本人のみならずその血統の歴史を何千年も縛る事は珍しくないだろう。 このわけがわからない報告ももしかしたら一族の命運を左右する要素が含まれてい
ギャラクシーifエピソード編「未踏の見識」WIZ-DOM
鏡の中の世界とシンクロニシティ。 一見何の関係性も見られない現象であっても因果が繋がっていないとは限らない。 こちら側の世界で起こった事が鏡の中の世界の事象に投影されたならば、それぞれの登場人物も共通の因果に捕らわれるのは自明だろう。 それが無限に広がっていた可能性の収束という形で示されることも必然の帰結だと考えたい… それは長年使えなかった天からの恵みに突然結晶化が及んで新技術が発明され、新時代への鍵がもたらされる儀式の一環なのだ。 その一連の流れが神や大自然の意思かどうかは受け取った側の心持ち次第だ。 信仰心は聖なるものだけに捧げられるとは限らないのだから。 「汎式皇国機巧…インペリアル・マテリアル?一体何の事だ。そこから説明しなおしてくれないか。」 「何度も言っている筈だけど。そちらの方面には疎いのかしら?黄昏の黒魔導士様。」 「白魔導士の範疇の話でもないはずだが…聞き方が悪かったら謝罪しよう。なにとぞ教示してくれないかウィザースプーン殿。」 ステラとディーナは小一時間マウントバトルを交わした後にようやく本題へ入る事にした。...
ギャラクシーif編エピソード「未踏の見識」EGO
ロ マンを求めて彷徨い、結果蜘蛛の糸に救いを求める。 その様子は現世の摂理そのものを見せ付けられているように感じる…自然界で仏が蜘蛛の糸を垂らしてくれるはずは無いので糸の先は蜘蛛の巣なのだが、すがる人々は別にそれを気にしないようだ。 そして現実的理想に見えてその実態は非現実要素の集合体であった人工神域の展開は壮大な皮肉であった に違いない。 それであっても蝶は大空の彼方に想いをはせ続ける…自らの空虚な器を満たしてくれるものを求めて。 「とりあえず設計図の体を成していない提案書はこれ以上回してくるなと伝えておいて。」 前々から確保してあったベイエリアのプライベートラウンジでくつろいでいた遊名はその言葉で秘書との通話を切った。 タブレットデバイスに転送されてきたデータの一群は夢と理想の受け皿になる為に組まれたものだということ以外に伝わる事は無かった…傍らのテーブルに置かれたトロピカルアイスティーがベースのカクテルのグラスは放って置かれた時間を結露によって主張している。 それは自分の演出している時間を味わってくれない人間に対しての物言わぬ抗議であっただ
ギャラクシーif編エピソード 「未踏の見識」序章
”欠落書架”…誰も知る術が無いはずの帝国図書堂の一角に名付けられた呼び名。 世界中の「失われたモノ」の素材が記載されている書籍が収められているとの噂は歴代の当主だけに伝えられた不可侵の秘密だった。 しかしまことしやかに伝えられた口伝の中には「黎明の女神が顕現した経緯と実態」だの「皇帝がどこの世界からやってきたか」だのという冗談としては笑えない情報もあり、いつしか関係者だけに留まらない程にその口伝は広まっていった。 そしていつしか興味本位で忍び込んだ者や一旗上げる為に「真相」を我が手にと意気込んだ者は元より、その道の専門家達や魔導を究めた導師達をも帰らぬ人としてしまったその噂は死の呪いそのものと見なされることなり、今に至っている。 そのうち人々は神話の欠落に興味を持たなくなっていった…過不足無く巡っていく日常に身を任せるのが自己の宿命であり使命という思いが共有されていったのだろう。それは永い平和を築く礎となっていた。 そう、皇帝の勅命により異世界への境界門の規模を大幅に広げる事が命じられた、その時までは。
ギャラクシーifエピソード編「久遠の帰途」 ダークロア
「全てが調和した優しい世界を。」 彼女は最初にそう願い、真摯な祈りを捧げた。 しかし、そもそも最初から世界は調和した存在であると思う。 いや全能の神が創ったからとか自然の摂理が侵される前まではな、とかそういう方面の話では無い。 確かに不和や争い、差別や格差が星の数ほど溢れる時代であるのは議論するまでもないことだろうが、 結局それも「人間社会の中だけでは」の話だ…それを「自然界全てにおいて」に置き換える事は不遜が過ぎるだろう。神を信じるかどうか以前の問題だ。 例えこの先テクノロジーが発達し続けて天候や自然現象、時間や空間を思いのままにコントロールできるようになったとしてもそれは人間の意識内での話。論議に付き合う気は無い。 「世界」は元々支配などできぬものだから。 ふむ、だいぶましにはなってきたのではないか…? 秋緒は高台から自分の群れのテリトリーを見渡してひとりごちた。 小さな大天使の崩壊による因果律の大変動、かの女神顕現によるセカンドストライク…惑星規模の大災害は人間社会だけでなく自然の許容量を遥かに超えた爪痕を各地に残していった。...
ギャラクシーifエピソード編「久遠の帰途」 EGO 開パート
「この案件につきましては担当の者に一任しておりますので、こちらでお答えできることはございません。 後日アポイントを取って担当部署の者にお問い合わせください。」 取り付く島は無かった。大自然の大海原に投げ出された事だけを思い知らされたのだ。 それでも海図や食料、使っている船舶や各種機器のメンテナンスは元より人員管理や航路進行スケジュール運行までを逐一やってもらっている人間の待遇としては破格であったかもしれなかった。 こんな事なら多少の無理をしてプライドを押し込め、一括のパッケージツアーを提案してもらえば良かったのかもしれない。 その上で社会科見学プランもつけてもらって… 希望の通りの筈だったシナリオ進行は灼熱の空気を孕んで体の中を焼き続けた。 そんな茹った頭で何とかなんてできるはずないじゃない。 そう愛花にバッサリ切り捨てられたのが一昨日の事だった。 それでも開は自分の中に堆積した感情を消化できずにいた…唯一の理解者でありかけがえの無い家族であった妹は人間とはまったく違った存在となり、空の彼方へ飛び去ってしまった。 「人間の可能性の殻を壊すことので
ギャラクシーifエピソード編「久遠の帰途」 イレイザー
ミカエル様…今度の案件まずはあの者達を差し向けて様子を探らせるのがよろしいかと。」 「”アスクレピオス”を使うプランか。しかし…」 ”アスクレピオス”、この星周辺の星の連なりを表現した星座という概念で表される物のひとつ。 その中でも恒星の軌道に沿う12の星座の中にもうひとつ付け加えられる事のある13番目の星座。 この星の駐留部隊が現地の文化をいたく気に入り、自らのコードネームにまでしてしまったというその名は今となっては鼻つまみ者だけが集まる”独立”機動部隊の総称となっていた。 そこに属するのは本国から直接派遣された特務部隊の構成員だけではなく、この星の生命体と交わった二世、三世のようなハイブリッド達が主になっている。 そしてこの地においての「よそ者」とされることの多い彼らの拠り所でもあるらしい。 それゆえに”土地勘”は働くが、イレイザーとしては未熟な者も多く、数多の司令官達が匙を投げてきた厄介な要素であるのは否定できない。 それでも純粋な天使では持ち得ない彼らなりの武器も多い事はこれまでの戦闘データから明らかになっている。 そう、莫大すぎる力を有
ギャラクシーifエピソード編「久遠の帰途」極星帝国
ねえお姉ちゃん…私の世界はこれからも変わっていくのかな? 世界境界門を通り、こちらの世界に渡ってきてから毎夜のごとく続いた自問。 故郷を離れて帝都に赴き、さまざまな出会いと別れを繰り返し壮絶な戦いを経験してついにもう一人の姉がいるであろう世界に行く事になった日の夜。 嬉しさと不安がないまぜとなり一睡もできなかった事が遥か遠い日の事に思える。 ただ一人の姉を失ったあの日の想いは記憶の果ての扉の奥に閉じ込めたままだが、色を変えた右目の虹彩と共にその思いが消えることは無い。 境界門を通った時の誓いもそう、同じことだ。 そしてフォルナは翌日に迫った本国召集前夜である今の時間を追憶に浸る為のものと割り切って思いのままに過ごすことにする。 運命や宿命など一刀の元に切り伏せる意思を改めて受け入れるその為に。 「この度の召集により馳せ参じました統括官閣下。」 「長旅ご苦労だったアンタレス…いやフォルナ。私の事はレイナでいい。とりあえず一息つくことにしよう。紅茶でいいか?」 レイナは侍従に用意させていたティーセットを手に取り、自らの手で茶葉を選び紅茶を淹れ始める。
ギャラクシーif編エピソード「久遠の帰途」阿羅耶識
今抱えている数多の幻想も願望もいつかは思い出として懐かしむ日々が来るのだろう。 その時はできるだけ飾り立てることなくそれと向き合いたい。 どれだけ非現実的だ、と言われようとも、だ。 降りしきる雪は全てを覆い尽くすだけのものではないのだから。 「鹿島様の見る”景色”はその全てが現実となる。」 …いかにも眉唾もののその噂だけが事前に得られたただひとつの情報だった。 しかしそれを聞くのすら半年以上の信用を積み立てた上でようやく聞き出せたものなのだ。 だがそれを真に受けなければならない程の深刻さを彼女は伝えてくれたように思えるので、疑いもせずその場は聞き入ったが全ての疑念は晴れなかったのが正直なところだ。 そしておっかなびっくりの戦々恐々という心持ちで望んだ今日のお目通りではあったが、あのような年端もいかない少女がかの女神顕現のときの陣頭指揮を執り、”宝物庫”の件を収め、今回の事案の主要戦略を組むと言う。 まるで狐につままれた気分なのは偽らざるところだ。 それにメインの戦力にはあの八剣の末娘を引き続き据えるという。 何でも古代の神々すら叩き伏せるとの触れ
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