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ギャラクシー”フォールンマテリアル”ー渇望と展望の呉越同舟ー

  • 4 日前
  • 読了時間: 3分

戦場のルールを変えるのは裁定の女神だけでは無いかもしれませんぞ?皇女様。


帝室の相談役である老魔導師のご高説はその言葉で締めくくられる。


珍しく律儀に聞いていたラユューであったが、最後のその一言が気に入らずに今得られた知識を投げ捨てた。


わざわざ呼びつけて戦略概念指導を望んだのは他でもない私自身だ。


しかし直接的な「勝利条件」の達成への道筋とかセオリーの抜け穴の見つけ方とかありふれた自己啓発論が聞きたいわけではなかった…そこらへんの懐疑的話術士の書いた本などに時間を割く日々は当の昔に卒業している。


その辺の事は彼も重々承知のはずなのだが、それでもその口から出る言葉は自らが積み上げてきた「成功体験」を大幅に脚色した眉唾もののエピソードだ。


自我意識汚染の弊害が出る前にお引取り願うか?ラユューはメイドを呼びつけると未だに持論陶酔の余韻に浸る老魔導師に退室を促すように命じた。


彼は帝室の皇女に持論を披露した栄誉を語り継ぎ、その後の日々を悠々と過ごすだろう。


その顔に満たされた優越感の色に感情がざわつくがここは威厳ある態度で送り出さねばなるまい。


ラユューの自我はこの時点でかなり揺さぶられていた…それでもこの皇都の象徴たる一族の一員として無様は晒すことはできまい。それがいかに自尊心をどれほど傷つけるものであったとしても。


その心の揺らぎを見て取った老魔導師は自分の提唱した持論が皇女の意識に楔を打った事に満足してこの場を立ち去った…その楔が自らの一族の繁栄の象徴となる事を確信して。




「最近は日々壮健のようで何よりですね。アンタレス閣下。」


「やめてくださいメンカリナン先生…私はまだその名を背負うのに十分な器ではありません。修道院にいた頃のようにフォルナと呼んでくださって構いませんよ。」


フォルナは未だ慣れない謙遜表現でミクトに言葉を返した。


冥界の盟主に仕える巨頭の一人を討ち取り、レッドジュエルの銘とアンタレスの称号を受け取ってからフォルナに対する評価は一変した。元から貴族の出であることもその変化に拍車をかけている。


そう、十将軍筆頭のアークトゥルス様との出会いから始まった私の日々はこれからより激しさを増すだろう。皇帝直轄部隊に配属されてからは一介の剣闘士だった頃とは桁違いに広い世界と経験が待っていた。


そしてもう一つの世界でならば姉さんとまた会うこともできるかもしれないと知った。


異世界派兵の最前線に立てることが決まった事で運命の扉は開かれたのだ。


そう確信できた喜びを抑えきれず、ミクトへ今の思いのたけを報告しに来たのだがなかなか言葉が出てこない。だがこれからの希望や展望、感謝や今までの苦労や葛藤を分かちあって欲しいという気持ちは暴走気味であった。


そんなフォルナをやさしく見つめるミクトはこれから訪れるであろう苦難をどう伝えたものかと思案を巡らしていく…それが今の彼女に受け止めきれない程の重さでのしかかることを分かった上で。


その苦悩を紅玉の瞳に映したフォルナは改めて目の前の恩師に向き直り、紡がれるであろう言葉をじっと待つことにした。


それによって伝えられるものが姉との望まぬ因果であることを確信した上で。



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