ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー調和の論議、破綻の協議ー
- 5 日前
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ふむ、例の夜会もさすがに延期か。もっとも「結果待ち」というところだろうがな。
その「通達」をなんとも不躾に投げられたクラリスは頭痛がより強まるのを感じてこめかみに指を押し当てる…毎度の事なのだが咀嚼に困る情報はもっと噛み砕いてから話してほしいものだ。
とりあえず傍に控えさせておいた騎士型ホムンクルスに視線を送り、この場周辺に封鎖結界など張られていないかどうかを確認する。
逃げ場が無くした状態で話を進めようとする輩の思惑はいつの時代も同じだ。
そう「ここまで聞いたからには逃げられないぞ」か「邪魔な君には退場してもらおう」だ。
そんな古典的な脚本が愛されるのも見ているものには喜劇でしかないからに違いなかろうが、実際のリアルに使われるほうの立場になってみてほしい…時を戻せる魔術があったとしても人生はやり直せない。
2周目は2週目なりの人生になるので初回の人生は帰ってこない。極東のことわざでは一期一会とか言ったかな?
とにかく与えられた舞台で踊るしかないこちら側としてはその辺の温情があるかどうかは死活問題なのである。自らの「王国」を築いて日々を過ごすクラリスは日常的にその事を身に染みて実感している。
故にここは論理的反論を通しておくべきだ。
刹那の時間で理論武装を整えなおしたクラリスは騎士型ホムンクルスからの周辺認知情報を受け取って彼女に向き直ると戦慄が自らの身を襲った…見覚えのある魔導刻印が彼女の目の前に構築されている。
アレは対象の魂を闇夜の呪縛で縛り上げるという神代魔術。高位の神聖防壁や復活術式をも無意味とするその禁呪は例外なく対象を冥府に送り届けるシロモノだ。
しまったな…まだ交渉段階にあると思って油断が過ぎたか?
だがこの周辺は封鎖されてはいない。私はまだこの舞台を降りるわけにはいかないッ…!
渾身の魔力で組み上げた起死回生の一手。しかしクラリスの展開した転移魔術はこの場からの離脱という役目を果たせずに消え失せた。
「導知評議会の時といい今回といい何で窮地に陥る星回りなの?あの人は。」
「アビシャグ…彼女自身の失態では無いのだからそこに腹を立ててもしょうがないでしょう」
ソフィアは今にも”どうして物事はいつも私の想定通りに動いてくれないの?”と言って騒ぎだしそうな目の前の少女をなだめる言葉を探したが、こういう時ほどかけるべき言葉というのは出てきてくれないものだ。自分の偏った語彙が恨めしいがその点はしょうがない。
ソフィアは適当な言葉を思いつくままに並べてアビシャグをなだめすかす中、ひとつの疑問が自分の胸中を騒がしている事に気づいて思考を巡らす。
それにしても件の場所は「聖域」のほぼ中心…冥府と現世を繋げるほどの穢れを生み出すことはほぼ不可能な筈。何が起こったのかまるで想像がつかない。
…いや、あの場の管理者である元老院の面々は「彼女」の私設護衛団だ。「彼女」が望めば聖域の中に魔神でも冥府の底に住まう魔獣の群れでも呼び出そうとするだろう。
それこそこの世の摂理や調和などその為の生贄とするのに何のためらいも無いのは自明。
しかしそれではせっかくの「聖域」の特性が失われる可能性がある。世界で唯一無二の奇跡を扱える儀式場をわざわざ穢す意味がわからない。
ではなんの為にパラケルスス女史を呼び出した?自らの手で不穏分子を処理しておく為?
…いや違うだろう。
まさか”「聖堂」内の中身はがらんどうでもぬけの殻”という噂、戦略的虚偽などでは無く…
ソフィアがそこまでたどり着いたのを待っていたかのように、アビシャグの目は妖しくソフィアの意識を嘗め回してきた。

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