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ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー誓いによる英断、意志による決断ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

あの日の月の光は私の心をいつでも照らしてくれた。


得体の知れない宵闇の中で希望という名の救いを届けてくれた物語。


運命的な出会いによって未来の扉が開かれるストーリーは少々ベタな展開であったが、そんな部分も親しみを感じさせてくれて子供心に嬉しさを感じていたものだ。


今では日々の日常に追われる中で思い出すことは減ったがそれでも大事な思い出のひとつである。


今日も幼い娘達を寝かしつけた後にその大事な神話の1ページを脳裏に浮かべて描かれた冒険の日々を反芻していく。


非現実な世界の中で描かれた非日常が躍るなかで登場人物たちの喜び、決意、決断の物語が進んでいく。


そしてヒロインが主人公に親愛を示す笑顔を向けて夢物語は幕を閉じる。


私としては納得のいく完結こそしなかったもののひとときの夢想譚は充分すぎるほどの快感をもたらしてくれる。


気が付くと時計の針は頂点で一分の隙もなく重なっており夜の帳がもたらす静けさは時間の経過をしっかりと感じさせていた。


今日もいささか回想にふけりすぎたか。


自分を少し戒めて自分の寝室に向かおうとしたとき違和感が首筋にぬるりと巻き付いた。


窓から差し込む月の光が壁時計の針を不自然に照らしている。


…秒針が動いていない。


自分の手足も動かない。


夜の闇の中で空気の流れすら感じられない。


呼吸の仕方すら思い出せなくなる中、背後に不穏な気配を感じた。


「ご機嫌ようあなた。あの日いただき損ねた対価、もらっていくわね?」


聞きなれた妻の声が私の脳内に響いて、私の五感は情報を取得することをやめていた。



「朝比奈、だったか。お前の方での状況把握は当然できているはずだな?」


「もちろんです。ですがあなた方からの情報提供が充分な形であることが前提条件だったはずですが…その点お忘れではありませんよね飯塚殿。」


夜の空気すら寝静まった中、秋緒とゆかりはお互いの情報共有を拒否して話を膠着させていた。


秋緒としても自らのテリトリーで怪しげな動きを野放しにしているわけでは無いし人狼族の情報ネットワークがそれほど脆弱なわけもない。


それでもゆかりの所属している斎木内部の情報を必要としているのには当然理由がある。


…そう、異能者案件が起こす厄介さ。


それは秋緒のテリトリーだけで済む話ではない。


ダークロア全体の秩序や日常を揺るがす規模の話ですらある。


根源の森の中でもより深部に存在するこのルォノヴァーラ家の私邸にこの話の場を指定したのはそのレベルの危機を扱うときの慣例だ。


そして調停者として同席しているレイチェルは先程から小一時間続くマウントバトルに興味を失ったようで優雅に紅茶と焼き菓子を堪能している。


秋緒は退屈げな空気をこれでもかと撒き散らすレイチェルを視界の端に捉え、舌打ちを打ちつつ気を引き締めた。


まずいな…これ以上こちらの手札を見透かされると斎木側の事案対処「料金」はとてつもないものになるぞ。


真面目にヤツらのメイドとしてかなりの時間に従事せねばならぬかもしれない。


秋緒はその様子を脳裏に思い浮かべて血の気が引く思いがした。


笑いごとでは無い。


しかしそれだけの事案対処を我らが主導できればこちらとしては破格の安全保障を取り付けることもできよう。


考えるべきことをまとめ終えて一呼吸。


秋緒はゆかりの「勝負はもう終わっている」と言いたげな余裕の笑みを見据えて切り札を切る。


それはこれからの未来の主導権を譲らないという意思の表れであった。

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