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ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー認知の監獄と認識の虜囚ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

あなたがわたしにとって大事な存在であることにかわりはないのですよ。


…明らかに生気のない彼女の目に宿った狂気の光に私は射すくめられた。


静かに私の頬に添えられた冷たい両の手から伝わるはずのぬくもりは一切感じられない。


それどころか心の底まで染み渡るような冷たさは私の恐怖心を際限なく大きくして体の自由を奪ってさえいる。


もはや言葉で意思疎通できる状態では無かった。


私の脳裏には今の状況の解決に必要な要素は浮かんでこない。


ただひたすら彼女との平穏な日々の記憶が駆け巡る走馬灯の在りようは現世への未練を諦めろとの本能からのメッセージに感じている。


もはやこのまま彼女と共に涅槃へ旅立つことが唯一の救いであるのかもしれない。


明らかに思考にノイズが走り、判断力や思考能力は失われかけている。


彼女は私の様子を見て見るからに不気味な笑顔を見せた。


そして正に地獄の門が開こうとしたその時、いつしか不思議な陽光が差していることに私は気づいた。


奇跡のごとく動いた私の右手が温かいその光を受け止める。


これまでの日常の記憶が真っ白な光の中へ溶けていく。


その瞬間、私の久遠の旅路は確かに終わっていった。



「それであの子の魂魄の行方は分からない、か。これでこの案件は3例目…非常事態と言っていいわね。」


瑞希はこめかみに指先を当て頭痛をこらえた。この聖域の中での巫女の「連れ去り事件」は連日続いている。いくら情報を統制しても漂う不穏な空気で何かしらの事態が進行中なのは感じうるものだ。


そんな折に瑞希の胸中に渦巻く猜疑心は自身の意識を焼き焦がしており焦りだけが積みあがっていく。


熾天の巫女としての役目は平常時より重く瑞希の肩にのしかかっている。


しかし事態の対処に有効打は出せない…自責の念ばかりが脳裏を占めていた。


「弓削様…いや熾天天馬の巫女瑞希様。あまり自分を追い詰めるのはお止めください…我らも人の子。全能の存在ではありません。貴女様の心配りは皆理解しております。」


副官の彼は瑞希の心痛を和らげるべく言葉を紡いだ。それは現状の心休め程度の意味しか持たないのは明らかだったが、今彼が持ちうる言葉の中で精一杯の労いの言霊だ。


瑞希は彼の気持ちをささやかな笑顔で受け取ると肩の力をほんの僅か抜いて伸びをする。


そうだ…私にできる限りの事をしなければならない。皆の平穏と日々の日常を背負ってこその熾天の巫女なのだから。


改めて執務机に山積みになった報告書に目を向ける。


そこには「連れていかれた」巫女たちのプロフィールと彼女たちの持ち場での異変の様子がまとめられている。


彼女たちは少々の霊的存在に害されるような者たちではない。


この朱禁の聖域に召集されるほどの霊能力に秀でた選りすぐりの優秀な術者だ。


そんな彼女たちを容易く「連れていく」など余程の霊的干渉力を持った存在の仕業と考えるのが自然だろう。


しかし…


瑞希の意識の中にまたもや思考のノイズが駆け巡りその意識が霧に飲まれようとしたその時。


その霧中の感覚が瑞希の既視感を呼び覚ます。


この体感は「あの方」の権能のひとつッ…!何故今まで失念していた?


瑞希の意識は辿り着いた「正解」を激しい憎悪と共に認識した。


そう、かつて踏みにじられた尊厳の記憶と共に。




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