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ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー良識の招く破滅的観測ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

私にとって箱庭の中の平穏など何の意味も成さない…改めて論じる意義があるかしら?


それだけを言い残すと彼女は身を翻してこの場を立ち去ろうとする。


その様子がスローモーションで私の脳裏に映っていた。


このままその姿を見送れば引き継ぎも真っ当に終わっていない今の事案が壊滅的未来を招くのは明らかだ。


だがどうすることができるのか?彼女をこの場に立ち止まらせる理由がまだ何か存在しているのか?


ようやく幼児性を保つ事が可能になった検体達を理想の未来へと導く術を私達は持っていない。


そう、これからやっと理想の具現化について語り合おうと胸を弾ませてきた私に突き付けられた突然の別離勧告。その意味するところは折角の理想の器を砂の楼閣に戻すことに他ならない。


そして”ミストレス”を失った私達はあの組織にとっても協力関係という対等な立場でいられなくなることは必然…親を失った幼子達だけで外の「大人」と交渉などできる筈もない。


その後モラトリアムから投げ出された彼らは良くて実験動物、もしくは世界の異物として排除されるのを待つばかりとなるだろう。


まさか刹那ほどの時間でわかるだろう思索さえ投げ出したわけでは無いだろう?


私はもどかしいほど動かない利き手を彼女に伸ばして何か言葉を紡ごうとする。


「行かないで」?「話を聞いて」?…自分がどういう言葉を選んだのかは覚えていない。


私の気配に対して振り返った彼女の笑顔。その一瞬の感情の揺らぎが全ての可能性の発露を生んだ。




「それが今回の作戦コードである”ナーサリィ・ブレイク”の概要ということですか。毎度の見切り発車は危険だと思わないのですか?斎木一尉。」


「それを含めての決定は変わらないことよ。私が今求めるのは現状の具現化ヴィジョンのみ…わかってくれるわね?榊原一曹。」


恵と新名の言葉による肉弾戦は未だに着地点を見つけられずにいた。


恵は目の前の上長に対しての質問権を現状持ち合わせずにいる。


…それにしても今”ピジョン・ブラッド”や”ルナティック・センシズ”案件は他の部署の管轄だった筈。


件の「神域」拠点制圧チームも私達とは別のチームが取り組んでいるし上層部の直轄事案に関わることは無いだろうとの通達があったばかりだ。


それなのに何故今危険因子を増やそうというのか?平和の意味が辞書に載っていないのだろうか。


恵はそれでも何とか意思の疎通を量るため脳裏の辞書を検索してみる。


”私の果たせる役目は何でしょうか”?”もっと有用なプランを提案しましょうか”?


違うな…


思考の無限ループが恵の状況把握力を明らかに削いでいく。あまりにも模範的回答の価値が希薄だ。


「正解の無い問題に対しての提案」は得意なんだけどどうしたものかな。


いつまでも自己問答を続ける恵の様子を興味深く観察する新名は結露で真っ白になった窓を背にして口角を少しだけ歪めた。

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