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ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー自我と自意識による楽園案内ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

かつては確かに日々の日常を刻んでいたはずの時計の針。


その動きを止めた今では初めからその姿で掘り出されたオブジェのように聖堂の中心に佇んでいる。


しかし誰もが踏み込むことを許されなくなった空洞のごときその空間に満たされているのはかつて共有された苦悩と栄華だけではない。


むしろこの場の意義と機能が失われた後に蓄積されたものがこの地に眠る意思と記憶をこれ以上なく雄弁に物語っている。


それらの守護者として自らを主張している彼らの使命…そう、今では共に分かち合うことが不可能となってしまったかつての理想と夢想を遥か未来へ送り届けること。


いつか聖典に記された楽園の具現化を現実にできる者へ願いを託すために。



「…これは明らかに”無欠世界の具現化”への対処任務ね。久々に不可能案件を振られたというわけか。」


「そうだな。藤宮直系の”セレスト・フォール”がわざわざ現場に出張るらしいからな。」


千里と光はシンクロした溜息をつくことで目の前の事実を許容しようと試みる。


だがそれも無駄な努力であることに変わりない…失敗の可能性を考慮しない行動プランを建てるのは勇敢とは違うモノ。無謀という日本語が誰しもの辞書に載っている意味を噛みしめるべきである。


しかし「可能性が認められないからやりません」は通らないことに変わりはない。


現実という言葉が使われるのは大体の場合不条理と不都合を乗り越えて見せろという事に他ならないからだ。


それでも…


千里と光の思考が無限ループに陥りそうになったその時、その場に呼びつけられた少女の不満は臨界点に達していた。


「あの、とりあえず私を呼びつけた理由あたりから確認してもいいですか?」


「なるほどそうだったわね愛花ちゃん。マインドブレイカーの彼の監視役としての任務も勿論あるからちゃんと聞いていてね。まずは作戦の骨子からだけど」


…日本語が通じていない千里の様子に苛立ちが加速していく愛花ではあったが、聞くだけ聞いてからでないと自分の言葉が届かないことを察するしかないこの現状を飲み込んで言葉を遮ることはしなかった。


平穏な日常を自ら手放してまで選んだ今の現状。望むべき未来を手にするためには目の前の階段を一つずつ上っていくしかないと決めたではないか。


積みあがった不満を論理武装で押し込めると、愛花は先ほどの訳も分からぬ固有名詞を噛み砕こうとすることから始める。


えっと、確かテキストファイルのあの部分に書いてあったやつだったよね。


「相手の望む”完全な理想”を対象の意識に投影することで個人の自我を封印する空間」…だったっけ?


まるで小さいころ絵本で読んだ悪い魔女がやりそうなことだな。


千里は愛花の思考が走り始めたのを確認すると微笑まし気にその様子を眺める。


かつて選択肢が用意されなかった自らの「運命」にも救いがあると思える、この景色を愛おしく感じることができる現状を抱きしめて。


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