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ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー機密の必然、内密な偶然ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

ふむ、どちらにせよ議事録の公開程度で崩れる調和などに身を委ねるなどできない…この返答を貴女が想定していないわけはないよね?ミス一色。


優雅な装飾に彩られたこの場に似つかわしくないほど簡潔な言葉を突き付けられ、真純に二の句を継ぐ余裕は無かった。この事実上の降伏勧告は完全な途絶か従属かを選ばせるもの。


もちろんどちらを選んでも望む未来の可能性は限りなくゼロになる事は間違いない。


そう「現実を見ろ」という言葉が使われるとき、勧告側の認識に沿ったものだけが「現実」である。


それを論議で解決できるケースは皆無だ…そこには示された正義に従え、暗黙の了解を飲めということ以外の意図は含まれない。


しかし未だにあの日の景色の彩度が忘れられない事は確かであり、私にとっては揺るぎない「現実」なのだ。


そして実用性をほぼ使い果たして当時の思い出を投影するだけの美術品に成り下がった稀代のアーティファクトが示すのは「かつてのありえたはずの未来」だけかもしれない。


無謬の希望と緋色の煌めきが彩った未来への道。あの日共有した奇跡の時間を語りあかして喜び合うだけの時期はとうに過ぎている。それは誰もがわかっている事だ…それでも。


真純は自分の理想郷を成り立たせていてくれていたオブジェへの憧憬を大事に思いながらも意識の深層へ押し込んで鍵を掛けた。自意識の立脚が自分の中だけで出来ないようでは話になるまい。


そして今必要なのはこなれた交渉術でも理想を伝える熱意でもないだろう。


しかし先方は現世的利益目的のプレゼンテーションを求めているわけでは無いようであるしこれでは八方塞がりだ…この場自体が異世界のごとき居場所の無さ。あまりの絶望感に真純の内的世界に闇夜の帳が降りかけたその時、紫電のごとき閃きが脳内に舞い降りた。


そうか、異世界…そう「境界門」の生み出すエネルギー変換理論にはこれからの希望を生み出す可能性があるか?


あまりに突飛な真純の発想を聞いた「先方」は見るからに目を輝かせてプレゼンを聞き始めた。




「えーっと、まただいぶ胡散臭い話で場を繋いできたようですね?遊名さん」


「開口一番のご挨拶ね風花。私の独断で行かせたのは事実だけどそれなりの勝算はあったわよ。」


それなりってどれくらいだろう…風花は絶望と動揺をないまぜにした表情を隠せずにいた。


その様子を苦笑して眺めた遊名ではあったが、全くのブラフだけを吹き込んできたわけでは無い。


なにせ「石」の応用テクノロジーの基礎理論の一部を提供してきたのだ。内々で取り決めはしたものの、他勢力の主力メンバーに嗅ぎつけられでもしたらそれこそ文字通りの略奪戦が起きうるレベルの話である。


それでもEGOとして持ちうる機密は他勢力より抜きんでている…魔術や呪術がどれほどの永い時間を積んでいようと問題にならないオーバーテクノロジーはそれらを凌駕していよう。


遊名はいつに無いほどの全能感に浸り、お気に入りのブレンドのコーヒーに口をつける。


立ち上る香気はいつもより快感を際立たせて己の存在を主張してきた…これが到達者の味なのかな?


あまりに傲慢なその味わいは幻像を確信に変えるかのように意識を侵食してくる。


そのあまりに不遜で無防備な笑顔を浮かべている遊名に風花は寒気を感じて思わず表面だけの作り笑いを返した。



ー同日EGO本部秘書室機密課にてー


「ああ、そうだ…例のカリキュラム管理地区の責任者であるフィールグッド女史にお取次ぎ願いたい。「プロトタイプ”S”事案」の事でと言えばわかるはずだ。それと」


彼女はその回線の先に冥府行き車両の管理者がいることを想定しないミスを犯した…すでに切符は予約されていたにも関わらず、だ。 


そして彼女のダイアログは翌日当然のごとく途切れる事となった。


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