ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー未遂の悪と未達の罪ー
- 5 日前
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そうね、祭壇にかつての日々の願いを掲げましょう。それを扉を開く触媒とします…誓いをここに。
厳かな空気があたりに満ち、霊力の密度が飛躍的に濃くなっていく。
壱与はこれから顕現するであろう神格について想いを巡らせていった。
秩序の具現化という神代の奇跡をその身に宿すその姿は人々の意識を灼き、あらゆる常識を屈服させるのだ。
そして全てが塗り替わったその時、国譲りの儀式が始まる。壱与の役目はそこからである。
黎明期の終わりが訪れて久しいこの国にもまた新しい歴史が刻まれるべきと確信した彼女の気色ばんだ論説に胸を熱くした日々は遥か彼方に流れた…それでも望み続けて辿りつけたこの機会を逃すわけにはいかない。
底知れぬ闇夜の中歩き続けたこの道は安息の地と栄光に繋がっていなければならない。
壱与は儀式の最中である彼女の背中をじっと見つめてその思いの成就を願った…神域や西方浄土にいる神仏にすら願いを聞いてもらいたい程に彼女は耐えてきたのだ。いい加減に自ら背負った願いという呪縛から開放されてもいい筈だ。
刹那の瞬間で終わる予定だった儀式の時間は永遠とも感じられる苦痛を強いてきた…もはや現世の器で耐えられぬ圧力では無かったが、最後の自我を燃やし尽くす事で彼女は儀式を成就させた。
そして彼女の霊力と精神力を吸い尽くして神は顕現した。
しかし、あまりにも不遜な笑みを浮かべてこの場に降り立った「女神」は目の前の骸に全く興味を示さずに壱与の元へ歩いていく…
そのあまりにも傲慢な在り方を直視してしまった壱与は希望という名の言葉を自らの辞書から消し去った。
「それが「公文書」の私的決裁を押し通してまでやりたかった事?理解が追い付かないわ…今回の要因解説からもう一度説明してもらえる?」
「しかし…弓削殿。これは聞いた者にかの神格との因果を植え付ける呪式。巫女である貴女はより神々の
力に影響を受ける。自殺行為などと生ぬるいものでは無いのですよ?」
紗綾は釈迦に説法を痛感しながらも釘を刺しておくことにする。
万が一遥が神の傀儡にでもなってしまえば未曽有の大災害が起こるだろうことは確定である。
言葉による注進が今何の意味を成さない事は紗綾自身が一番痛感しているのだが、他に取りうる選択肢は用意されていない。
しょうがない…この手は使いたく無かったのだが。
紗綾は懐から呪力の詰まった折鶴を使って霊峰結界を組もうとして、衝撃を受けた。
でたらめな規模の霊力をあたりに振りまいて近づいてくる者がいる。
件の神格では無いようだが…あまりにも揺らぎが激しい。まるで神獣の群れを引き連れているかのような暴力的霊力はこの土御門の霊地を暴発させるのではないかと思えるほどだ。
そして遥と紗綾の目の前に現れた少女は困惑する二人に快活な笑みを見せて一言だけ確認してきた。
「目標は「あれ」でいいんだよね?」
あっけに取られた二人は首肯することも制止することもできずに現地へ向かったうめの背中を黙って見送ることになった。

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