ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー旅立つ歌と白銀の楔ー
- 5 日前
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そう、それが君の求めていた「現実」ってやつだ。満足したかい?
今でもその言葉が何度も脳裏に共鳴していた。
あの日見ていた虹色の希望は玉虫色の無力な正義だった…私はそのことがどうしても納得できずに彼のもとへ論戦を挑みに行った。そしてその時のことは忘れることのできない絶望と挫折を私の心に刻んだのだ。
その傷跡がかつて共有できなかった理想の証となったのは必然だったのだろう。
栄光への道しるべは誰の前にも現れるわけでは無いのだから。
「だいたいこの事案はしっかりと決着してあったはずでしょう?何故今このタイミングで問い合わせが来たわけ?」
「それが…誓盟皇志会からのコネクションだということで」
目の焦点が合わない彼女の秘書はしどろもどろになりながら説明を続ける。
その惨状を静観しつつも千里はため息をついて状況を確認していく。
…よりによってその方面からの要請とは完全に油断していた。
改めて湧き上がる苦々しい感情を噛み潰して目の前の”嘆願書”を睨みつけると頭痛がより増してくる。
誓盟皇志会…表向きとしては「外に出せない機密の管理保護を担当する独立行政法人」である。
しかしその実態は「”無謬の石”関連のオーバーテクノロジーを独占による「皇国」の復活をもくろむ異能者集団」というのはその界隈の実務者たちの周知の事実だ。
それにあの黎明の女神顕現の際の機密情報流出事案。
その際の混乱と事態の収拾を行ったのが皇志会の初期メンバーなのであり、そこから始まった「借り」の清算は今でもEGO上層部の頭痛の種に違いない。
そして今回送り付けられた”お気持ち表明文書”がこちらに何を要求しているのかは誰の目にも自明なのだろう。
「どうしますか?万城目三佐…これ以上便宜を図るのは現場の運営体制に支障が出ます。万城目三佐?」
こちらに話を突如振ってきた彼女の秘書の言葉は千里の意識をすり抜けていく。
今千里の意識はこの場の判断をする為の許容量が用意されていない。
この場の空気が粘度を増して全員の思考を鈍らせていくが、誰も今発するべき言葉を探し当てることができない。
そんな中、沈黙に耐えかねた若き士官の一人が発した言葉がこの場の破滅の因子に口火をつけた。そしてそれを待っていたかのようにたちまち因果の炎は意思を持っているかの如く様々な要因を焼き焦がし始める…
千里はその言葉も事態をも静止することもできずにこれから燃え広がるに違いない不条理を思い浮かべて天を仰いだ。

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