ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー指揮者と奏者のメモリアルワルツー
- 5 日前
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…それで「理想の舞台」への道筋には目途がついたのかな。スケジュールを押さえる方の苦労も察してほしいよ?ミス・イワノビッチ。
決裁書類をわざわざプリントアウトして提案稟議を品定めするその姿は鷹揚そのものであり、傲岸不遜を絵に描いたようなモノに映った。
ミラの自我意識にのしかかった重圧はもはや常人の想像を超える領域に達していて、満足な思考を望むべくも無い。
そもそもこの決裁を出した上の人間は当の昔に管轄責任を投げだしていて今は雲隠れ中である、というのが今の体裁だ…実際EGOの調査機関を目の前にして自失状態の当人の姿はプロジェクトの責任どころか自らの意思を担保することもできない有様だった。それを必死に庇う母親の姿を見て幻滅を通り越した機関の人間の思うところは察して余りあるものであったに違いない。
しかし、かつての夢の残骸が見つかっただけマシというのがいたたまれなくもある。
プロジェクト名ひとつだけで見切り発車を余儀なくされたあの案件よりは、だ。
そう、「いつかの日々の栄華を取り戻そう」という意訳だけが詰まっただいぶ過去に寄っかかり気味のこのプロジェクトの継続許可だけが今のこの部署の存在意義だ。
ミラは突っ込まれどころ満載のこの事案をなんとか「引き分け」以上にしてこいと指令が下った日から予感がしていたのだ…”自分たちの夢の日々の再現ができなければこの部署は用済みだ”という執行部の判断が下るだろうこの運命の日が。
未だ思案にからめとられるミラを横目に、稟議書を嘗め回すように見て料理の仕方を決めた彼女は指を鳴らして「自意識の檻」をこの場に具現化させた。
その禍々しくも眩い光を放つその空間の在り方にミラは自らの鏡像を見た気がして、その「檻」へ無意識に手を伸ばした。
「それで、ミラさんは”持っていかれた”というわけで…マグナスさんはこの事態をどう見ているの?」
「ミス日向…領域具現化系能力者である貴女の意見を聞きに来た私に所見を求めるのは何とも意地の悪い事だ。爆撃ヘリ部隊を呼び出しただけであの場から逃げられたのはただの奇跡なのだぞ。」
ジョセフィーンはやれやれといった感じで溜息をつくと、ニコニコと人懐っこい笑顔を崩さない葵に対して苦言を続けようとしてふと思い立った。
そうだな…「彼女」の自我領域空間は招きいれるべき者のみに作用して中からは出られない構造のようだった。それなのに葵はメガネウラ編隊を即座に呼ぶようにと言った…物理攻撃があの領域に有効なことをあらかじめ知っていたかのように、だ。
もしや有効だったのは物理的爆撃では無く戦場のイメージを内部のミラと同調させることで”檻”を崩すことだったのか?
一通り推論をまとめ終わったジョセフィーンは葵に答え合わせを求める視線を投げる。
その刹那のアイコンタクトを受けて葵は何とも和やかな笑顔を返す…それはこの場の「一次試験」通過を祝うものに他ならなかった。

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