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ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー事実に咲く花、史実に実る果実ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

純白のキャンバスに一輪の花…それが彼女の描く精一杯の憧憬だった。


それでもその孤独を感じさせない花の在りようは様々なものを惹きつけることとなった。


それはこの世界を定義づける摂理であり、日々の日常を彩る時間であり、理想を具現化する意思であった。


それらは花の周りに普遍的な生活の絵を映し出していく。


するとキャンバスに描かれたその絵は人々に愛を注がれることとなり彼女の理想を次々に現実のものとしていく。


そして紡がれだしたキャンバスの絵は人々の理想を叶えるための象徴となっていった。


次第に彼女の理想はその絵を愛する人々の日々を表現することへ変わっていく。


親しみが恋愛へと移っていく様、憧れが愛しさへ変わっていく様、嬉しさが喜びの共有になっていく様子を表現する度に彼女の胸は沸き立った。


人々が子を成して家庭を営みその血脈を紡ぐ様は彼女自身の存在理由にさえなっていたのだ。


無論誰もその聖域に踏み込むことはしなかった…神話の時代の平穏すら霞むほどの完全さに不満を抱く者がいるはずが無かった。


そう神よりも不遜で傲慢な存在がこの絵の事をかぎつけた、その時までは。




「困りましたなドールクラフト様…最近の貴女様は柱の管理官として、封鍵の担い手としての自覚に欠けているのではないのですか?」


ミズキに対して遠慮も配慮もなく持論を垂れ流し、この”熱情”の柱で仕える最古参の魔術師は悦に入っているようだ。


あまりにも主観的な持論解釈を小一時間聞かされているミズキはそれでも彼の意図する、いや求められている返答を模索して眉をひそめた。


…あまりにも心的負荷によるマウントをとるだけの言葉だけが積み上げられているし汲み上げるべき言葉と意思があまりにも薄弱だ。


これは意志掌握の力で踊らされている可能性も考えたほうがいいか?


ミズキは傍に控えていた副官にアイコンタクトを取り目の前の老魔術師の意識を断つように命じた。


彼は私の管理する封鍵、「寂莫の窓」の力の概要を知りすぎている。


そうそれは「満たされぬ願いや想いを可視化して救済のヴィジョンを具現化する」権能だ。


誰もが持ち得るその弱さを暴露して自我を暴走させうるこの力の危険さは彼自身が一番よく知っているはず。


それだけに彼の求めるものが不明なのは危険だ。


ミズキはそこまで思考をまとめると副官と護衛数人が老魔術師を取り押さえるのを目視して今後の対策を考え出して、目を見開いた。


ほんの数瞬前まで見慣れた老魔術師の姿だった男は生気みなぎる青年の姿となってこちらに禍々しい視線を突き刺している。


そして彼を取り押さえたはずの副官たちは見るも無残な老醜を晒して息絶えていた。


ミズキの瞳に明らかな動揺が映ったのを確認した青年はその鮮やかな緋色の瞳を輝かせて笑い、必要最小限の挨拶を口に出した。


「初めまして。”熱情”の担い手ドールクラフト様…貴女様の心を頂きにまいりました。少しの間わたくしめと踊ってくださいませんか?」


青年はあまりにも場違いな魅惑を宿した言葉を吐いてミズキを見つめる。


ミズキは意図的に引き出された嫌悪の感情を飲み下すと、この聖域に似つかわしくない憎悪を抱いて青年へ向き直った。


…「現実」の意味をどちらが定義するかの争いの火蓋が切って落とされるのをこの場の皆は黙ってみているしかなかった。


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