ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー不遜の決意と傲慢な理想ー
- 5 日前
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ほう…そのような未熟な器で何が受け止められるというのだ?
それにあの方々もこの出来では納得などしないだろう。
それがカバラのセフィラによって授けられた天啓というならば別の話だが。
それとも貴君にはこの件の成功を約束できる腹案があるのかね?ミス・マキャフリー。
…四方から降り注ぐ容赦の無い品定めの言葉はジリアンの意識と自我を確実に摩耗させていた。
遥かな昔神域に至った初代評議長が組んだとされる理想像にして魔術の到達点。
その「聖典」と呼ばれる秘術体系の器。それこそが正にこれからの栄華の礎となる…筈であった。
しかし現実としては誰にも扱えぬ術式と汎用性のかけらも無い呪法が記されているだけの代物。
そもそもが「”神”を討伐する為の装備」だとか「神域を顕現させる為の神具」など、今の時代の現世で必要とされないモノが羅列された”ただの歴史書”とされていたいわくつきの存在だった物だ。
本来なら禁制書庫の中で朽ちるのを待つだけの宿命は不変であり、そのまま歴史の闇の中に姿を消す運命は変わらない筈だった。
そういった「現実」が覆ったのが忘れもしない「”黎明の女神”降臨」の報告が入ったあの日である。
妄想と夢想しか記されていないと一笑に付されていた評価は一転し、瞬く間に魔術文化圏の未来を開く「聖典」として解読が始まったのだ。
突如訪れた「覇権」の可能性。それに誰もが浮き足立って研究を始めていった…一夜にして始まったその権利の争奪戦はあらゆる欲望と願望を飲み込んで日常を丸ごと書き換えていき、人々を心身共に魔物にしていったのは言うまでもない事実だ。
それでもジリアンは「聖典」を読み進めていくうちに著者の想いを切に感じ取っていた。
名実ともに「魔獣の棲み処」となってしまった自らの日常の希望の灯を燃え上がらせる為に。
…評議場の異質な空気を構成していた評議員達はこの場においてまだ知性的な瞳を揺るがさないジリアンに対して篭絡でなく隷属化の段取りを組み始めた。それこそ下位魔獣の躾でもするかのような雑な手順で。
「まるで画に描いたような”由々しき事態”ね。私は何から始めたらいいかしらねノルトライン?」
「少しは自分の裁量で判断するということを覚えて欲しいものですな。ウェルズ卿。」
アレシアとアンネローゼはとりあえず挨拶代わりのマウント合戦で意思の疎通具合を図ると具体的な対策案について話し始めようとする…が、双方とも自前の手札を先に晒すのは癪に障るようでなかなか談義は進まない。酸素濃度が目に見えて減少しているように感じられた。
傍使いのメイド達がとうとう空気の重さに耐えかねて卒倒し始めたのを見てアレシアは観念して譲歩案を切り出すことにする。
「そうね…ミス・マキャフリーがそう簡単にあちらの手に落ちることはないでしょうけど、一応の備えは出しておくことにしましょうか。世界を喰らう神狼をも縛り上げたという神具と原初の魔法、四元の王の名において封印を解くことを許可します。詳細はメルキオールに聞いてくださる?」
これでいいんでしょう?と言いたげな視線で判断を示されたアンネローゼはやれやれといった感じでそれを承認する。
…それが”世界の仕組み”に対する宣戦布告となる事を十分に飲み込んで。

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