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ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー不遜な現状と傲慢な事実ー

  • 3月23日
  • 読了時間: 3分

そう、夢を見せてもらいたいのだ…”理想的な日常が現実に勝つ”というファンタジックな夢を。


それがそんなに難しいことかね?


彼はその後も身勝手な偶像論を朗々とした声で唱えていく。


聴衆はその意味を理解していないながらもその言葉を反芻し、大事なものとして脳裏に刻んでいく。


それがただひとつの真理であると無心に信じてひとりひとりが自らの行動規範として彼の理念を受容していくのだ。


そしていつしか公演テーマは具体的な”理想の具現化論”に移行していき、高まった会場の熱気は冷静な目で見ていたはずの”外部”の面々の理性すら溶かし切っている。


いつしか呪術めいた言葉組みの言霊は自我の無意味さを重点的に説いていく。


「皆でこの理想を成就させるために滅私の心で奉仕するべき」との結論が登壇者の口から紡がれたときこの場のボルテージは最高潮に達し、怒涛のごとき拍手が万雷のごとく鳴り響いた。


皆の辞書の”現実”と”正義”の意味を自らの望む語彙に塗りつぶした登壇者は満たされた自尊心に満足し、恍惚の笑みを示した…紡がれた宿命の因果が無事稼働し始めた日のことだった。



「ふむ、プロジェクトコード0375”ナーサリィ・ブレイク”を承認したというのか。ミス斎木も思い切った判断をしたようだな。」


「何を呑気なことを…そのプランは我らの日常を支えている儀式魔術体系の根幹を揺るがしかねない代物。打つ手は即座に出していかなければならないでしょう?ミス・ブラヴァッキ。」


ステラは珍しく苛立った声のヨハネスに向けて私見を見せることを渋っていた。


現状の日常ほぼ全てをアリステイル財閥と導知評議会に握られている今、新たなフォーマットを組み上げるチャンスではある。しかし一から全てを創り出せるほどのリソースと人員は出せない…さてどうしたものかな。


ステラの脳裏に予見の魔女と世界のアルカナを司る彼女のかつての言葉が渦巻いている。


これから選ぶべき選択肢は既に自分の手中にあり、勝算が見込める腹案も預かっていた。


しかし…


自分の言葉が届いていない様子のステラにもう一度釘を刺そうとしてヨハネスは”現状認識”を並べ立てる。


「私達の稼働させている思考領域を無くしては件の神域の浸食の阻止や天界や冥界の使者達との対等な会談もままならない事を理解してはいる筈。この期に及んで”それが気に入らない”などという感情論を持ち出すほど貴女は愚かではないと記憶していますが…もちろん今回も賢明な判断を下してくださいますね?黄昏の黒魔導師殿。」


慇懃無礼を薄いオブラートに包んだだけのその「通告」は改めての降伏勧告であったが、ステラの自意識内ではそれに屈する選択肢は無いという答えがすでに出ている。


それでも通告された事が”事実”であることは間違いないが、それをそのまま受容すればいいというほど現状は甘くあるまい。ただの操り人形は前線で使いつぶされるのが当たり前…それが戦場の不文律だ。


そのことを噛み締めた上でステラは眼前の「調停者」然とした彼女に自らの提案をプレゼンし始める。


それを聞いて次第にヨハネスのアイスブルーの瞳に暗闇色の影が差していった。







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