ギャラクシー”ジェネシス・コード”ー不条理が呼ぶ確信的予測ー
- 5 日前
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いかなる時も我らが主の観測と祈りの重ね合わせだけが新たな希望の礎となる。
不気味な響きの断定の言葉…この場の皆の自我意識が縛られた。
どこからともなく肯定を促す拍手が聞こえ、それは次第に快哉を叫ぶ地鳴りのごとき歓声を呼んだ。
熱狂の渦は留まる事無く議場の隅々まで広がりついに恍惚の涙を流す者もいる。
誰もが登壇者の授ける感動を享受して心に誓った。
これからの希望は我がリーダーの示す展望と行動を承認する事だけなのだ…その理念を具現化させることだけが自らの役目なのだと。
…この胸に宿る歓喜と確信こそ全ての闇を払う力なのだと。
そして誰もがその相貌に映していない。
登壇者とその傍に侍る者たちが優越感を通り越した冷えた目で確信的睥睨をしていることには。
「それが”リビルド・メモライズ”に関しての調査報告というわけで…むしろよくレポートをまとめられるだけの正気を保てたものね。天原はこの件どう思う?」
「「現実」の拡張構築を専門とするリアライザーの二つ名は飾りですか?そもそも貴女が振った話題ですよ…蒔苗さん」
瞳は正解の答え合わせから始めようとする蒔苗に対して当然の不満を受け止めてもらうことから始めることにする。
今回の事案は精神感応系と思想統制系の複合能力者によるかなり”ヤバい”ものだ。
彼らの聖域の中で粛々と積み重ねられた「信仰心」はいよいよリアルを自らの理想的ヴィジョンで組みなおそうとしている。彼らの教義は人々の日常を尊重しないだろう事は明白である。
それにテセウスの船のごときやり方で浸食しているそれは日々の平穏に半ば同化しようとしている。
トップの異能支配を止めればいいという単純なものでは無いのだ。
瞳の憮然とした表情に対してやれやれと肩をすくめた蒔苗は自分の腹案を渋々出すことにした。
「…まずは「正常」な意識構築を得られる場を用意しておくから天原は指導者陣の動きを止めておいて。
そしたら私が意志力勝負の一騎打ちでトップの異能支配を一時的に遮断する。ここまではいい?」
瞳は怪訝な顔で蒔苗の相貌を見つめる。
いくら百戦錬磨で「現実」に対峙し続けてきた蒔苗さんといえどもあの能力者相手に一対一の勝負を挑むのは厳しい筈だ。相手は一個世界を単独で支配できる神域級の使い手…まともにやりあえば蒔苗さんの自我意識もただでは済むまい。
意識と人格を漂白された人間が日常に戻れる確率は正直なところ絶無だ。
それでも…
瞳は蒔苗の目をじっと見つめ、「必ず戻って来ますよね?」とあえてアイコンタクトで返答を求める。
幾多の世界と精神世界を渡ってきたその目に映る透き通った意志。
それが”正義”による精神汚染に耐えうるものだと信じ、瞳は蒔苗の腹案を咀嚼し始めた。

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