ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー近視眼的願望がもたらす必然的代償ー
- 5 日前
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さあただひとつの叶えたい願い…決まったかね?
問いかけられた彼女の言葉に対して即答できない事に私は戸惑いを感じている。
この世の奇跡でしか叶わないだろう私の願い。
そもそもこの場に到達すること自体が不可能の象徴として語り継がれてきたモノなのだ。
それでも度重なる偶然と幸運により彼女との邂逅は果たされた。
あとは請願を受諾してもらうための誓約を捧げて私は望み通りの人生を手に入れる。
この魂が俗世の穢れに沈む前の洋々たる日常を今こそやり直せるのだ。
最早現実という名の奴隷主に従属する義務のない世界で私は「私」をやり直す。
本来得られていたはずの燦燦とした日の光の道を今度こそ取り戻すのだ。
何千、何万、いや何億回と繰り返し練習したその請願の誓約の紡ぎ方。
今こそ万感の思いを込めて奏上するときである。
…しかし妙な感じがする。
違和感というにはあまりにもささやかな何かの予兆めいた感覚が私の意識の隅に渦巻いている。
別に見過ごしても構わない程度のこの不快感は日常の最中であれば脳裏にかすめることもなかっただろうモノ。
しかしこの期に及んで何かの不都合要因が起こるとは考えにくい。
何故なら彼女が私の目の前に姿を現してくれたことが何よりの証では無いのか?
私は今更ながら自分の願いが叶う正当性を探して過剰なほどに自分の意識を鎮めることにする。
そう未来の段取りは決まっている。
何度目かわからない自己確認を済ませた私は改めて願いのほどを彼女へ伝えることにする。
お決まりの二つ返事で承諾をしてくれる彼女。
誓約を受け取ってもらったことを安堵したその直後、彼女は突如「吹き出した」。
彼女は自らの感情を爆発させて笑い出す。
あっけにとられる私の様子を見て尚彼女は笑い続ける。
彼女の意図を図りかねた私が歩み寄ろうとした次の瞬間、その可憐な口元が不気味に歪んで言葉が漏れた。
…私は自分が今何を捧げることを誓約したのかを初めて理解することとなった。
「いくら人の身には釣り合わない願いを聴く代償だったとはいえいささか”巻き上げすぎ”だったのではないですか?「穏眠」の守護者、テネブラエス様。」
夜羽子はアシュレイ家が公務の場所で扱う執務室で慣れない”接客対応”を強いられていた。
いつもならわざわざ「実家」で公務することなど無かった。
夜羽子にとってこの屋敷は完全なプライベート空間であり同じ吸血鬼一族であっても寄せ付けない
程に役目を果たす場とは場所を分けていたのだ。
しかし今例外対応に迫られているにも理由がある。
いくらダークロアに属する闇の世界の住人たちとは言えど高度な情報ネットワーク網が世界の隅々まで網羅された今の時代では人間達と社会的に協力関係を築いておかなければ日々の安全保障も安泰では無い。
だが根源の森の中には未だにそういった昼の世界の住人達を見下す神霊や概念存在がいることも事実。
夜羽子もそういった存在と人間との橋渡しをすることも役目のうちだ。
…それでも今回の問題は何とも頭の痛い問題になったものだねぇ。
夜羽子は目の前の少女の姿をした存在が「やらかした」ことの後始末をするために事情聴取を試みているのだが全くと言っていいほど要領を得ない。
例の被害者一族全体の”尊厳”を「巻き上げた」少女は駄菓子一個をおまけしてもらった程度の感覚でいるようで詰問を受けている今もニッコニコである。
このままでは信用問題として関係各位からのお叱りを一昼夜単位で賜ることになるな…
夜羽子の頭痛はさらに存在感を主張して来ていて意志力をも蝕みつつあった。
そんな困り果てた夜羽子の様子を見ていた少女はこれから起こるであろう問題と騒動の顛末を想像してさらなる夢見心地に浸ることにした。

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