ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー理想の花園と管理人の思惑ー
- 5 日前
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"現実"というのはある程度フィクションでないといけないものなの…わかってくれるわね?
すっかり冷めてしまった紅茶に興味を無くした彼女はメイドを呼びつけてティーセットを片付ける事を命じた。
それはこの場だけでなくこれからも建設的論義をする気が無いという意志表示に他ならなかった。
どうする…?ここに辿り着くまでに投げ打った信用や実績、今回の賭けの為に用意した莫大な補償金はたった今霧散した。
そして彼女は私の承諾の言葉を聞き届けてからこの場を立ち去るつもりだ。
もはや私の持ち出したリソース全てに興味を失った彼女にあらゆる懇願や説得は意味を成さないだろう。
それは私自身の身の破滅だけを意味しない。
この場て確約されるはずだった未来への道筋なくしては私に賭けてくれた関係者やその一族及び家族の日常そのものが失われる…それは文字通りの地獄の顕現だ。
全ては現実そのものの話しかしていなかったではないか…まるで納得も承諾もできる事が無い。
確かに理想論や理想像を現実にしてほしいというのが今回の議題ではあった。
それでもこちら側が用意したのは現実の糧そのものだ。彼女が愛するフィクションの世界の話ではなかった。
脳裏に何の解決にもならない抗議の言葉が溢れる。
私のその様子を彼女は憐れみと蔑みが入り混じった目で見ている。
無言の間が数秒流れた後、彼女の傍らで直立していた執事が使用人達に目配せをしたのが見えた。
タイムアップの警告が示されたのだ。
私は思わず立ち上がり最後の懇願を試みた。
その様子を哀しげな瞳で見ていた彼女…その緋色の輝きが一際輝いた刹那、私のこれまでの現実はその価値を消失していった。
「また一人ミストレスの"幻想現実"に囚われたというわけね。しかし彼女本人は人工神域の核となった筈だし今の話では辻褄が合っていない。どういうことかしら?新名。」
「そうですね…私が考えるところではかの"根源の森"の統括を務めるルォノヴァーラ家の一族が持つ異能が成せる現象だと考えます。」
ほぼ予想通りの回答が返ってきたにも関わらず遊名は眉を寄せて明らかな不快を表した。
ルォノヴァーラ家の"鏡面実像"の異能。
"自らのイメージ通りの実体を通して様々な権能を行使できる"能力。
それは古代の神々が自らの姿を望むように変えて人間の世界に干渉したとされる伝承そのままだ。
そんな事が可能な超越者がEGOの勢力圏内部で暗躍している…明らかな異常事態だ。
「それで今回取り込まれたのはどれほどの規模か把握しているわね?」
「はい、現状ではグループ企業体ひとつ程度のものですが、最初に取り込まれた男性があの誓盟皇志会の役員ということで」
遊名は新名の報告の後半以降を聞き取る事が出来なかった。
…誓盟皇志会?あのEGO上層部のアキレス腱そのものの?
遊名は"彼女"の企みの意図を想像して意識の制御をひととき手放す事になった。

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