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ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー林檎の徽章の蛇遣いー

  • 5 日前
  • 読了時間: 2分

これも巡り合わせがもたらしたこと…今回は不問としましょう。


なんとも涼やかな音色の通達が男の意識を揺るがしていた。



告げるべき言葉を伝え終えた主人は既に意識を男から外した様子であり、彼の滞在意義はとうの昔に終わっている。


しかし彼は跪いたまま動けないでいた。


完璧だったはずの戦略提案で喝采と自己承認を得られたときの熱気がまだ脳裏を灼いている。


半生を懸けて積み重ねた信頼と信用が煙のごとく消え去った現状をまだ現実だと認めたくないのだ。


それでも彼の襟元に輝く林檎の徽章は煌びやかな光を放っている…もはやただ美しいだけの装飾品に成り果てたそれは今後彼の未来と可能性を縛る挫折の象徴としてのしかかるのだろう。


そしていつまでも立ち上がる気配の無い男に衛兵の無骨な手が伸びる。


その瞳にかつての上官だった男に対しての配慮はまるで感じられない。


先程権限と共に全ての尊厳を奪われた彼はこのままこの謁見の間から放り出され、捨て駒としての運命が確定した…筈だった。


強引に立たされて緩慢な足取りで引きずられていく男。


その両耳のアクセサリーに輝く黒真珠のごとき石。


相互に釣り合わなくなったふたつの存在がこの場の"現実"を歪める様を誰も想像等できなかった。




「その後に起きた事も"夜露の涙"による"共感献身衝動"が起こしたものというわけね?」


「いえそれがですね…」


先程から要領を得ない報告に不快感を感じ始めたローズマリーは一旦話を打ち切って穴だらけの現状把握を補完する事にする。


件の"アスクレピオス"に関する情報は今でも最重要機密であり誰でも扱えるものでは無い。


そしてその専門性から誰もが理解できるものでは無いのは確かだ。


それでも目の前のエージェントは現場では生え抜きのエリートとして活躍しているとの事。


では何故情報の解像度がこれほどまでに低いのか?


ローズマリーは短く溜め息をつくと思考のベクトルを変えてみる事にした。


もしかしたらこの件は常人では把握し難いファクターが大部分を占めているのかもしれない…それなら現状で理解可能な部分を掬ってみる事から始めてみよう。


「ごめんなさいね。今把握している事だけでいいので少しずつでも話してくださる?」


「…お言葉ですがフォンブリューヌ卿。我々は」


不意に言葉を切ったエージェントは意を決して情報の共有を始める。


ローズマリーはその真意を悟った自らの運命を受容するまでに数日を要する事になった。




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