ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー普遍の対価と不変なる代償ー
- 5 日前
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…そう、あの場所への「道」が開けるのも時間の問題だったというわけね。
燃え盛る激情を持て余しながらも彼女は淡々と事実確認だけを進める。
最近目に見えて増大している非常事態報告。
手の打ちようの無い超自然災害。
日々の日常を荒らし回る超越者達の跳梁跋扈。
それらがもたらしているセーフティネットであるはずの"現実"の崩壊は人々の日常感を機能不全に追い込み、平和を維持する為の不文律をことごとく形骸化させるに至っている。
地獄の釜の蓋を開けて誰が喜ぶのかは見当がつかないが、嗜虐趣味の愉快犯の仕業でない事を心から祈るばかりだ。
目前の脅威を直視できない彼女の思考領域はとりとめの無い言葉遊びの為だけに稼働している。
それでも現時点で彼女以外に事案の決裁権限が無い事には厳然たる意味がある。
明らかに巨大な規模の呪術儀式方陣が起動している現状に対抗策を実行できるのは彼女の他にいないのだ。
この議場に集まった面々は一縷の希望を託してすがるように主の命を待っている。
その真摯な眼差しを精一杯の誠意ある言葉で受け止めた彼女は意を決してこれからの「攻略ビジョン」を話し出した…
いずれもたらされる日常の平和の中に自らの居場所と存在意義が無い事をわかっていながら、だ。
「なるほど話の経緯はわかりました。しかし対能力者戦闘もまともにおぼつかない俺に組織戦闘の前線に出張れというのは大概な無茶振りではないですか?」
「別に貴方に前線指揮や戦術構築をして欲しいというわけじゃないわ…その辺の事は専任者がいるから安心して。真代君」
…日本語による意思疎通が絶望的な事だけを認知して開は苦笑いをするしかなかった。
万城目さんは普段は優しくて気配りもばっちりな人なんだが作戦行動時は平然と人を地獄の釜の中に投げ込むからな。
開は千里の綺麗なオッドアイを覗きこんで機嫌の程を伺う。
その澄んだ光を満たした瞳には"わからないことはないわよね?"という無言の圧力が発せられている。
ダメだ。完全に出来上がっている…この状態でこちら側の要望が通った試しは無い。
流石に観念した開は渋々ながら承諾の意を示して話を進める事を選んだ。
「それで件の"ムーンライズバレー"に今回の事態の要諦たる人物と結界の要があるのですよね?しかし俺はそういう方面の知識は皆無ですしその手の専門の人員がいるでしょう?何故…」
開は自分の声があまりにも遠く聞こえるように感じ言葉を切った。
そしてこれから千里の口から語られるだろう事を察してしまったのだ。
…人の因果を組み替える為の力、人を人ならざる存在にする力。
まざまざと蘇るあの日の情景、詠が空の彼方へ消えていった忌まわしきあの日の記憶。
千里の言わんとする事を察してしまった開は彼女の瞳に野獣のごとき目を向ける。
千里は開に向けられた激情を慈母のごとき微笑で受け止め、改めてこれからの運命の道筋を語り出した。

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