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ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー摂理の胎動と運命的選択ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 4分

人形の見る夢は全てがあどけないモノなのだろうか?


彼はごく自然に語り出して皆は呆気に取られた。


人形の考える理想や幸せなど我々が作り与えたもの以外ありえないだろう。


その場の誰もが口にはしなかったが当然の共有した価値観だという考えは一致していると思っていたのだ。


あまりにも唐突な問題提起に彼以外の皆はその真意を測りかねている。


まさか本当にあの人形たちが自律した思考を持ち自分の理想を具現化するほどの能力を扱うことができると考えた?


その仮定に何の意味がある?


そもそも私たちの望まぬ未来のカタチを排除して造った人形たちが描く未来は私たちの望む世界にしかならないはず。。


もし仮に私たちが想像しないような逸脱したモノが生まれたとして、それを許容する選択肢は無い。


我々の理想的箱庭をただ無邪気に維持するだけが彼らの存在意義なのだから。


彼をとりまく者は皆彼に労いの言葉や休息を促す言葉をかけた。


…君はいつでも考えすぎるのが問題だからな。


…そんなこと気にすることもないでしょう。


…そんな悲観的観測を好むのは良くないことだと思うぞ。


様々な言葉が彼に投げかけられる。


それぞれが彼の生真面目さや勤勉さを好ましく思っており、それゆえに今彼の思考を縛っている要因を取り除き苦しみを緩和してあげようとしているのだ。


しかし彼は拭えない違和感が自分の内に騒ぐのを感じていた。


確かに私たちが平穏と穏やかな日常を育んでいくために始めたこの箱庭創りではある。


だが次第に箱庭の住人達に求めるモノは変化しているのは明らかではないか?


自由意志を与えておきながら事実上の従属と隷属を義務づけ、争いや諍いの要因は心理的にロックしてある。


そして望むべき未来像をもあらかじめプログラミング済みな予定調和に果たして自己満足以外の何が得られるのだろう?


彼はそこまで思考を走らせて自分に注がれている異質な視線に気づいた。


いつまでも変わらぬ平穏を誓ったはずの仲間たちの目は今や自分と同等のモノを見る目ではなくなっている。


彼はそれでも意思疎通を量ろうとして、察してしまった。


箱庭の住人達に共感できることとその人生に思いを馳せる自分の存在。


「仲間たち」の目に慈愛の色が灯っていた。


それはかつて人形たちに向けていた保護者としての愛情。


それが何を意味するかを彼の意識は無自覚に理解するに至った。


…その日を境に箱庭の世界にひとりの英雄が産まれ、新たな希望の物語が紡がれることとなった。



「貴女にはこれまでの領域内トラブルを認知していたとする情報が私どもの手にあります。その事実はこれからの関係性に望ましくない要因を生むものです。何か弁明があれば伺いましょう…「七星神器」”ドゥーベ”様。」


「我々としてもあなた方との共存関係を乱すつもりは毛頭ないことはご理解頂きたい。「アスクレピオス」関連では様々な便宜を図ってもらっていることには恩義を感じてもいる。しかし私にも組織の中での立場というものがあってね…地球圏での支配領域の融通をこれ以上拡大するわけにはいかないのだ。貴女もしがない”中間管理職”ならわかるだろう?ミス斎木。」


新名とドゥーベのやり取りは懇意にしている取引先へのビジネスライクな話に聞こえるものの、少しでも均衡が崩れれば大規模都市経済圏がひとつふたつ蒸発する危険性を孕んだモノである。


そもそもイレイザーという侵略勢力の規模は本来地球圏だけでおさまるようなスケールではない。


それこそ太陽系全てを網羅するほどの天文学的戦力をも持つとの情報がキャッチされているほどだ。


そして種族としてのイレイザーの上位個体は単独で小中規模の都市を壊滅させるほどの超常現象を起こすとのデータが残っている。


言葉ひとつの語彙が伝わらないことがどれほどの惨劇を生じさせるかわからない繊細な事態なのだ。


新名は熱くなりかけた頭に冷静さを取り戻すべく大きく深呼吸をする。


このEGO本部特別貴賓室に今一度の緊張感が張り詰めた。


この場をセッティングした外交特務部のエージェントや新名の護衛役の能力者達も固唾を飲んで相手方の動向に目を見張る。


イレイザーとの橋渡し役である「アスクレピオス」はイレイザーと地球人との交わりの中で生まれた者のコミュニティだ。


彼らの日常生活をサポートしているということで現地司令官である「七星神器」の面々とも”対話”や”交渉”の余地がある。


まだ破滅的選択を選ぶのは早いはずだ。


誰もがそう願いたかった。


貴賓室内の大気成分が薄くなっていく気がしている。


新名は周りの期待を背負って言葉を紡いでいく。


「現状私に差し出せるのはこれからの共存ヴィジョンのための便宜を口利きぐらいのことです。それ以上を望むのであれば…」


新名は苦々しい思いでそのあとを続ける。


その言質を確かにとったドゥーベは見るからに充足した満足感ある笑顔を浮かべて新名の手を取った。


新たな負債の原資がこれからの未来の行く末を決定した日の出来事だった。



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