top of page

ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー拒絶の意味と受領の意思ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

夜空の星々を映し取ったかのような宵闇色の旗が翻っていた。


それは誓いを共にした皆と眺めた夜空の色だ。


今や遠く手の届かなくなった理想像が色褪せたあの頃の熱情を思い起こさせる。


現在に届くことなく失われたあの日の希望は今なお私の心の奥深くを締め付ける。


どんな困難にも怯むことなく立ち向かった意思の源、


どのような理不尽にも屈することなく掲げた誇り高き理想、


いかなる不条理な時も共有し続けた誓いの言葉。


それぞれが日々進む道を開拓する原動力となり理想像を形作る原資となった。


そして振り返れば仲間達と歩んできた日常が歴史となり現在の栄華の礎となっている。


それは誇るべき到達者としての証だ。


しかしどうしたことだろう…最近はこの揺らめく旗印が奇妙な不安を掻き立ててくる。


まるで今まで踏み倒してきた代償をまとめて取り立てられるかのような漠然とした感情だ。


少し感傷に浸りすぎたかな。


私は遥か彼方に向けていた意識を手元に引き戻すと寝室に引き返すべく身を翻し…気が付いた。


かつて無謀な挑戦の対価を肩代わりしてくれていた、あの盟友の殺気立った視線が私の眉間に突き刺してあった。


いつから彼が背後にいたのか気が付かなかった。


苦楽を共にしたあの頃のままの彼の容貌は不気味なほどに代わっていない。


私はとっさに無様な懺悔を口にしようとして、彼の要件に思い当たる。


「念願が叶った時は私の命運を共に捧げよう」


…かつて誓ったあの日の対価。


なるほど奇跡の代償は私の念願叶った日々そのものであったのだ。


自分の差し出すモノを悟った私は彼にせめてもの笑顔を向ける。


彼の表情がわずかに微笑みを浮かべたと私が知覚したその瞬間、全ての誓約は満了の時を迎えた。




「ご機嫌いかがですか誓帝陛下。もう話すべきことはありませんね?」


「ミストレス…貴女がまだ人としての意思疎通をする気があるのならまずしかるべき釈明を聞きましょう。」


開口一番で精神的優位を取ろうとする真名とスピカは共に対話の主導権を譲ろうとしない。


二人の放つ禍々しい圧力はこの謁見の間の空気を鉛のごとき重さに変えている。


スピカを守護する近衛兵団達にも少なからず動揺が見えていた。


…この魔女の敷き詰めた布石はどれほどの破滅をもたらすのか知れたものではない。


お父様があの儀式の要石にされたことも他の「領主」が手を焼いていることも並行して手を回しているというのか?信じ難いことだ。


スピカは現状あまりにも優雅に組み立てられた破滅の図式を俯瞰してため息をつく。


自分一人で十分すぎるほどの災厄をもたらすことのできるこの女が何の目的で私たちの管理する「禁書」の力を欲するのかは見当がつかないが私の領域に害を成すことだけは確かだ。


念入りにこれからの戦略を練り直しつつスピカは自らの優位点を確認していく。


私の管理する禁書、”ディシジョンの槌”の力は決断や選択をする際の心理的負荷を跳ね上げるというもの。


今ミストレスは何を考えるにも精神破綻が誘発するような状態の筈だ。


しかし…


目の前の彼女の涼やかな相貌に苦痛の色は見受けられない。


むしろこちらの意識を絡めとろうとする圧力が感じられるほどだ。


おかしい…


些細な疑問が猜疑心を膨らましスピカの思考を惑わせていく。


ふと視界の隅で我が近衛兵団が声を張り上げている。


…下!陛下ッ!この謁見の間がッ…!!


スピカがその異変を認知したその瞬間、この場の現実が一気にその意味を喪失していった。


最新記事

すべて表示
ギャラクシー”フォールンマテリアル”ー自我意識境界の観測意義ー

「ふむ、不文律や”賢い選択”に疑問を持てる程度のレベルには達したか。いいだろうその案を承認しよう。 しかし「鏡面限界」に達していることが間違いないと?しかたあるまい…プランBの手配に移れ。」 リユニは目の前で交わされた会話の意味を受け止められずに自らの師に指示を仰ぐ。 だが彼女の上長である司祭は首を横へ振って視線を切った。その一挙動が示すのは暗黙の了解に従えという事のみだ。 そしてこの聖堂内の一室

 
 
 
ギャラクシー”フォールンマテリアル”ー切望と待望の相容れないスタンスー

そう、それが歯車としての理想のカタチね。それとこの誓約の期限はいつまでだったかな? …しかし白々しく確認してくるその口ぶりには毛ほどの悪意も感じられない。 それどころか「この場面で配慮をしてあげてる私は慈母のごとき存在」と顔に書いてあった。 愛花はそれを渋々許容してあげることにして話の先を促した。 それを好意的受容と見て取った彼女はテンションのギアをさらに上げていく。 満面の笑顔で語られる事案の経

 
 
 
ギャラクシー”フォールンマテリアル”ー未踏と未知が抱える神話ー

そう、元々絶望を受け止められない程度の器が夢や理想の重みに耐える事なんてできない。必然だと思わない? それとも様々な倫理や良識を犠牲にして専用の器を造る…?このひとつの禁呪のためだけに。 別に私は構わないけど、貴女にはそれなりの対価を支払ってもらうことになるわね。 必死に笑いをこらえて思わず吹き出しそうになっている彼女の顔は赤子の笑顔より無垢なものに感じられる。その様はまるで「ちゃんと言葉が喋れる

 
 
 

コメント


Copyright © Aquarian Age Fan Project All rights Reserved.

bottom of page