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ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー常識と定石が求める普遍性の果てー

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

やんわりと溶けた柑橘の甘みが私の心を解いていく気がした。


厄介者として蔑まれた事も遥か遠い昔のこととなった。


もはや不都合な現実を塗り潰し続ける労力を日常的に割かなくてもいい。


ただそれだけの事が私の心の平穏を担保してくれている。


そう、秩序の穴を意図的に抜けてこようとする不埒者やコミュニティ内の尊厳を食い荒らすだけの無法者対策に頭を悩ませてきた苦悩の日々も今は懐かしくすらある。


これからは私の望む理想像だけがこの領域の「現実」を規定する。


抑えようとしても溢れ出る歓喜と到達感に心は弾み、自己認識すら浮ついてきている。


無理も無い。


私に突きつけられてきた理想像は自己否定と自らの尊厳を貶める事だけを要求するモノだったからだ。


だが「聖典」を基とした世界の"正規フォーマット"が安定稼働を始めた今、その理想像の在り方も塗り変わり私の存在を賛美してすらいる。


これからは世界各地に広まってしまった「聖典」のレプリカや解説書を順次焼いていく事が私の役目となるだろう。


それがかつて同じ理想の元で日々を駆け抜けた仲間たちとの誓いを遂行する意味となるはずだ。


私はそこまでの事実確認を済ますと手元の果実酒を一気に飲み干して愉悦をその身に染み込ませる。


自らが背負うべき原罪がその魂を食い尽くしつつあるのを自覚しないままに。




「"偽書殲滅の勅令"ですか…しかし私達は我が領地を侵害するモノたち以外には興味はありません。


この根源の森の摂理と不文律は貴女方「四期の守護者」が何より理解されているのではないですか?


「萌芽の守護者」ヴェントゥス様。」


クレメンティーナはある程度気をつけて言葉を選んで口を開いた。


目の前の可愛らしい顔つきの少女は無表情をその顔に張り付けたまま話に応じようとはしていない。


この場の空気が怯えたような困っているかのような不思議な感覚の時間を流している。


…「聖典」と”偽書”の関係性は世界の因果にとって大分デリケートなものだ。


だからこそ管理者たる彼女たちの真意は図っておきたいのだがな。


自分の認知や自意識までもが歪められていくような異様な空気感の中でクレメンティーナは問いかけるべき、いや問い詰めるべき言葉を探しつつ間合いを図っている。


埒が明かないこの場の時間は次第に時間が凍結されているような寒々しさを感じるほどになっていた。


それでも物言わぬ無機物のようにその場にただ在り続けている「守護者」。


クレメンティーナの意識に圧し掛かる得体の知れぬ圧迫感は彼女の自我を締め上げ続けていた。


自らの魂の悲鳴に耐えかねてクレメンティーナはついに対話上の駆け引きを投げ捨てて口を開いてしまった。


「……ッ!」


その言葉として成立しない未達の音を聞いてヴェントゥスは初めて顔をほころばせてクレメンティーナへ今回の要求を言付けた。


その笑顔で突き付けられた今回の責務。それを認識してクレメンティーナのこれまでの日常感は決して戻ることの無い過去のものとなった。


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