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ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー尊厳の価値と威厳の意義ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 4分

あの日失くした理想の代わり…?そんなものどこにあるというの。


心底落胆した彼女の瞳の色が現状の絶望感をそのまま表しているように思えた。


かつて描いた栄華のビジョンは幻となり記憶の中にしか存在していない。


その記憶の中の栄光すら現状の自分を貶めるものだと彼女は感じているのだ。


無理もない…あの日誓った挑戦の対価は自らの半生で培ってきた誇りと矜持そのものだった。


英雄として築き上げてきた信頼だけが自分たちの新しい日々を創ることのできる唯一無二の代償だった。


しかしその試みはついに継続することができなくなった。


私たちが捧げたモノ以上の日常と未来の可能性が失われたからだ。


かつての英雄に向けられた侮蔑と失望の視線はいとも簡単に私の尊厳をはぎ取っていた。


好意の援助は無くなり労力を持ってその与えられた分を返さなくてはならなくなっている。


私の得てきたモノは当然のごとく皆に分け与えられなくてはいけなくなった。


そして先ほどついに私は自分の尊厳さえ捨てて皆の為の労力となることを誓約してきたばかりであった。


私に最後に残されたのは長い間私の日常を成り立たせてくれていた伴侶である彼女との平穏な未来、それだけだった。


しかし長らく時間を共有してきた彼女でさえ最早私との未来に希望は持っていないようだ。


その事実を認識した途端私の意識は急速に混濁して現実と幻との境界が崩れていく…


私の中の魔力や生命力が悪意に侵されて瘴気となり周辺に爆発的に拡散されていく。


これほど濃密な瘴気に晒されたモノは今までの日常には戻れぬ異形となり苦しみの中で生きていくことになるのだろう。


その初めの被害者は先ほどまで私に侮蔑と失望を塗り込んだ我が伴侶である。


せめて彼女が苦しみの中で怪物と化すのを見届けてから私も旅立つとしよう。


私は最後まで幸せを共に過ごしたかった彼女の怪物的咆哮を聞きながらこの世界での情報取得を終えることにした。



「雷帝陛下…昔話をするぐらいの時間ぐらいは私も許容するつもりです。陛下の御心をみだりに裂くのは私としても本意では無いので。」


「ミストレス…私も人としての感傷に浸ることはあるが貴女とそれを共有するつもりは毛頭無い。用件だけを簡潔に伝え、速やかにこの場から立ち去ってもらいたい。それがそんなに難しいことかね?」


真名とアルヴィナは互いの殺気をこの謁見の間に充満させて両者とも相手の意識を従属させようとしていた。


そのまとわりつくような寒気はあらゆる生物から生命力を吸い出すような危険なモノと化していた。


アルヴィナの従える屈強な近衛兵団すらも意識を保つのが精一杯なのが見て取れる凄惨さだ。


それに加えて真名の振りまく意思制圧の異能…領域干渉型の従属化能力は武力や抵抗力を持たないアルヴィナの副官たちの意識を刈り取った後である。


ある程度報告は共有していたとはいえこれは想定以上の悲惨な事態だな。


今にも感情が沸騰しそうな自我を抑えて、アルヴィナは意識的に論理的分析を進める。


クワイエット・ミストレス…そのあらゆる場に等しく静寂をもたらす異能。


能力者の無力化、悪意の鎮静化、意思の従属化。


それぞれが敵性存在の意思を折り継戦能力を剝奪するモノだ。


その複合的効果により組織的戦闘力が奪われたモノたちはミストレスへ加害することができなくなるという展開である。


さてどうするか…?


私の管理する禁書”ユニオンの法典”は「所有者が決めた秩序の優先度を自分の命より上に定める」ことを対象に強制させる権能を持つ。


コレが通れば百戦錬磨のミストレスといえど自ら自滅してくれる、”ハズだ”。


無論私の居城の中は”法典”の効力圏内だ。


そもそもこの謁見の場で私と会話できる状態では無いのだ。


では何故…?


アルヴィナの思考はいつまでたってもこの場の正解を出してはくれない。


その間にも平然とアルヴィナの座る玉座へ無防備に歩を進める真名の瞳には慈愛としか表現できない暖かな光が灯っているように見える。


…おやすみなさい皇帝陛下。貴女も両親のそばへ送ってあげましょう。


アルヴィナの耳に届いたその優しい言葉は遠い昔からの出迎えのような懐かしさでアルヴィナの意識をあっけなく消失させていった。


人々の語る神話の主役が交代したとされる日の出来事だった。



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