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ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー儀礼としての歓待、儀式としての感謝ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 4分

あなたが今何を望んでいるかはわかっているつもりよ。


その彼女の言葉に私の心はざわついた。


確かに望んでいたものは全て彼女からもらったモノばかりだ。


そう、自尊心や市民権、欲求を満たすための力や自分の尊厳を守るための価値観や論理武装に至るまで。


そして私が理想の自認像を得ることを彼女は何よりも喜んでくれていた。


それは誰もが思い描く幸福の在り方だったに違いない。


…しかしお互いが理想の関係を維持できたのは遠い昔のこと。


私が社会の一員となって庇護されるだけの存在でなくなったとき、当然彼女からの贈り物は手放さなければならなかった。


満たされていた子供時代はとうの昔に過ぎ去っていた。


大半の人間が誰もが通る当然の通過儀礼なはずだ。


私も当然それを受け入れて世の中における「普通の人」となった。


あとは愛する人と家庭を営み子を育てて静かに土に還るだけの人生を全うするつもりだった。


そのころ満たされていた私は彼女と過ごした「完全な日常」を忘れていた。


人間らしい欠落を抱えて生きている事で自らの異常性を忘れていられたのかもしれない。


だが私の存在因果は私自身の宿命を私が忘れることを許さなかった。


私の長所はことごとく他人との軋轢を生み、私の自尊心は事あるごとに他人の尊厳を貶めることが続いた。


コミュニティ内で私が特別であるという事があらゆる不都合の原因となっていた。


かつての救国の英雄に向けられる侮蔑と失望の眼差し。


あれだけ積み重ねた信頼と信用は陽炎のごとく揺らめいて消えたのだ。


そこへきて彼女との邂逅は異物である私に対しての世界の意思そのものであっただろう。


打ちひしがれた私に我が意を得たりと手を差し伸べる彼女。


それに応じることが何を意味するのかわかっていながらも、私はその破滅の意思を肯定することにした。




「さて今日はどのような用でのお越しかな?ミストレス。」


「少なくとも貴女を喜ばせる為の歓談をしに来たわけではないことだけは確かですわ…炎帝陛下。」


毎度のマウントバトルは双方のいつもの挨拶であるが周りの者にとっては気が気ではない。


誰もが我が主君の機嫌を取りたいところであるが目の前のこの女は単身で一個師団レベルの戦力をあしらうことが苦にならない事象改変を行使できる異常者だ。


”クワイエット・ミストレス”、斎木真名。


正にあらゆる意味での静寂をもたらす超越者のひとりであるこの女の機嫌が傾くことでどれだけの人的被害が出るか想像したくもない。


フォルテの側近達は忠誠心も使命感も風前の灯のごとく吹き飛びそうなところをなけなしの意志力で耐えているのだ。


目の前に当然のごとく居座っている破滅の使者に対して懸命に抗おうとする部下達を見てフォルテは心痛極まり思わず眉を寄せた。


…ついにミストレスにも確信を掴まれてしまったようだな。


そう極星帝国帝都に存在する禁制書庫の存在と所蔵されている禁書の有用性。


中でも”アニヴェルセルの福音”の記述は正にこの世界の未来予知を具現化するものだ。


そしてそれだけではなくその「正しい解読の仕方」までもが流出したと考えるのが妥当だろう。


風花雪月に加えて陽の因子をそれぞれ当てはめることで浮かび上がる5つの主文。


”五草抄”と呼ばれるその全てを掌握することによって可能になるこの世界の在り方全てへの干渉。


その力が彼女にもたらされる事の意味を察しない者はいないだろう。


冷たい汗がフォルテの首筋に流れる。


自分の持っている力だけではどうにもならない理不尽が人の姿をもって目の前に鎮座している。


その冷ややかで怜悧な眼差しは真名の美貌と相まってこちらの意思へ見えぬ圧力を強めていた。


だが私とて背負っている者たちを守れるだけの力と意思を持っていないわけではない。


フォルテは目の前の不敵な笑顔の圧政者に対して毅然と言い放った。


「ミストレス…貴女の望みの物を用意する意思は私には無い。どうかその意を汲んでいただけないだろうか?私たちのそれぞれの日常の為にもだ。」


端から聞く気がない素振りの真名に対してフォルテは一方的に通告をしておく。


話し合う余地は無い、これから先のやり取りは存在しないとの意思表示だ。


”実力行使をする要因はそちら持ちだぞ”という確認作業がたった今なされたのである。


フォルテは尚も余裕を崩さぬ真名へもう一言付け加える。


「今なら貴女への歓待も不都合無くできる。その意味合いをわかってもらえない貴女では無いと思うのだがどうだろう。」


フォルテの妥協案を不思議な面持ちで聞いた真名は心底疑問形でたった一言呟いた。


「そうですか…貴女に首輪は不要、ということですか。」


真名が紡いだその一言に対してフォルテは内なる憎悪を隠すことができずに自らが纏っている殺気を爆発的に拡散させる。


そのばら撒かれた死への誘いの空気はこれからの現実の意味をそれぞれの胸に深く刻み込む決定的要因となった。


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