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ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー作為的偶然と偶発的必然ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

かつての貴方には刻まれた傷に抗おうという気概が確かにありました…残念です。


聖殿に静かに響いたその言葉が私の現実感を消し去った。


そしてこの場に集った皆の心も騒ぎだす。


…まさかあの方にあの処分が下されるとは。


我々のこれからはいったいどうなるのか?


儀式の取り決めは一体どうなってしまうのだろう。


静まり返った聖殿の空気は動揺と猜疑心に染まり重苦しくなっていた。


それも無理は無い…この「朱禁の聖域」の枠組みから追放されることが何を意味するかは周知の事実だ。


そしてそれは人権剥奪ということだけに収まらない。


自らの能力や異能が”平和を害するモノ”と定義されること。


存在そのものが”穢れ”として扱われることである。


そうなれば人間としての意思や主張が認められなくなるだけではない。


自らが関わったネットワークや携わったもの、自分が作り上げた術式や呪法も禁忌とされ言葉通りの意味での「抹消処分」となる。


私という存在が世界に存在した証はすべて塵となり廃棄される。


いっそ魔物として生きていくことを考えようかとして、その思いを打ち消した。


私に手をかけねばならない同志や部下の心労が増えるだけだ。


かすかに燻ぶった生きることへの未練を断ち切ると私は授かっていた神具を主へ差し出そうとして違和感を覚える。


目に映る主の姿が不自然に揺らいで見える…?


突然のことに戸惑う時間もなく私の異能は私の人間性を食いつぶしていった。



「厳島様…いえ鳳翼の巫女雪菜様。聖獣権現のひとりである貴女様が穢れに直接対処するという意味、わかっておられるのですか?」


「あのままでは皆の意識も穢れに侵食されていたでしょう。それにあの場の事態に対処できる者が他にいたのかしら?」


あくまで涼やかな口調を崩さず雪菜は質問返しをする。


思わぬタイミングの意趣返しに副官の彼は渋い表情を見せて押し黙るしかない。


それでも言外に彼の主張は雪菜に突き刺さっている。


”貴女の責務はそれだけではないでしょう?”…だ。


雪菜自身それは重々承知ではある。自分の役割は統治と治安維持だけでは無い。


自分自身が平穏の象徴であり続けること。


聖獣権現のひとりとしてこの聖域の儀式呪法の要石として機能すること。


それは代々の巫女が人生そのものを捧げて務めていたことだ。


…しかしあの場での「人間の”穢れ”化」はあまりに不自然ではなかったか?


まるで仕組んであった仕掛けの起動スイッチが入ったかのような。


雪菜はあの場での一連の流れを再度思い返してみる。


確かに失望と絶望はたやすく能力者の在り方を歪めるものだ。


それでもあの場の彼はその程度の感情の揺らぎで堕ちるほど脆弱な者ではなかった。


そして自分の能力に溺れるほど未熟なわけでもなかった。


雪菜の意識の中をぐるぐると思考のもつれが駆け回る…求めた答えは深い霧の中だ。


あまりにもとっかかりのないこの疑問。


傍らの副官に意見を求めようとしたときに雪菜の視界に入った神具のひとつ。


それが象徴する事象と概念を思い出して雪菜の意識に閃光がひらめいた…


その様子を見て副官の彼は満足げに口角を歪めていた。


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