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ギャラクシー"ジェネシス•コード"ー不穏な請願と不遜な誓願ー

  • 5 日前
  • 読了時間: 4分

あなたにはそのままの私だけを見てほしい。


そのささやかな彼女の自己主張は私の心と意思を揺るがした。


彼女に差し伸べた自分の手が不自然に震えている。


自我と尊厳の全てを投げ出して象徴存在として生きてきたはずの彼女から発せられた確固たる意志表示に私は動揺を隠せないでいる。


そう自ら持って生まれたカリスマと美貌により所属するこのコミュニティの栄華を請け負ってきたその姿は正に救国の聖女であり皆の精神的支柱そのものであった。


彼女が見せる笑顔は万軍の士気を青天井に高めコミュニティへの忠誠に命さえ投げ出させる絶対性を持つ。


彼女がもしその胸を痛め涙を一筋流せばその悲哀と慈愛は民衆の心を打ちその運命を打ち破る奇跡の源泉となるのだ。


このコミュニティにおける彼女の存在は単なるシンボルとしての偶像にはとどまらない崇敬の対象となっていた。


そんな彼女の愛情や慈愛は常に皆に平等に分け与えられるものというのが皆の一貫した共通認識でありコミュニティ内での平穏を保つための絶対的不文律であり続けた。


しかしその聖なる規律は他ならぬ彼女自身の意思で破られた。


私の揺らいだ意思に楔を打ち込むかのようなその真剣な眼差しは彼女がこれまで秘めてきた決意の表れそのものである。


…気付いていないわけではなかった。


その想いを共有したいと願わなかったことは無かった。


それでも自分がその願いを受け取るだけの資格があるのかと悩んでいつもごまかしていたのは私自身の弱さに起因する。


愛しい彼女を自分だけの存在にすることがこのコミュニティ内においてどういう意味を持つのか。


知らないはずは無いし無邪気に想いだけを受け取るようなことはできない…自明のことだ。


いつまでも自分の思いに対して反応を返さない私に彼女は一言だけ言葉を紡いだ。


その一編の言霊は私自身の存在意義の根本を組み替えるのに充分な神威を持って運命の輪を回し始めた。




「ご機嫌いかがかしら氷帝陛下。貴女の涼やかなる眼差しはちゃんとこれからの私たちの好ましい関係を見通してくださっているかしら?」


「少なくともあなたがいらっしゃる予定の日はそんな気分のいい時間は無いですね。そのことは感じてくださっているかと思いますが…違いますかミストレス。」


真名とマリアの慇懃無礼バトルは毎度の調子で始まりこの謁見室全体に剣呑な気配がすでに充満していた。


…それにしてもあからさまに不躾な当たりで始めたものだな。


マリアは目の前の危機レベルマックスの異常者の佇まいを訝しげに眺めて不信感を募らせた。


そもそもの話この並行世界の極星帝国領にわざわざ単身で乗り込み「領主」の面々に直接物申しに来るというふてぶてしさの割にはこちらの陣営に自らの脅威が無いように話を進めてきている。


そんな緻密な調整ができる人間にしてはケンカ腰で話を始めるのは違和感が甚だしい。


マリアは真名の組み上げているであろう布石の積み立ての意図を探るべく「対談」を始める。


「早速本題からお聞きしましょうミストレス。貴女がこの極星帝国の「領主」達が管轄する禁書について嗅ぎまわっているのは何が目的なのです?そして私が協力する分が少しでもあるとおもっているのですか?」


マリアはあからさまな威圧を持って釘を刺しに行く。


いくら周囲を絡めとっていてもこちらは交渉の余地は無いですよと念を押しておく。


そうすることで意識的なマウントをとっていくやり方である。


元々寄る辺など作る気は無いのだから。


…しかしそんなことは相手方も百も承知のはず。わざわざ周囲を絡めとって私に公的アポイントメントを取るようなことをした?


マリアは自分の疑念の在り処を探してひとつの違和感に気付く。


…おかしい。彼女の思考は私の管轄する禁書、「レセルヴェの誓約」の力によって縛られているはず。


少なくとも自由な論理建てができる状態では無いのだ。


この禁書は”対象の未来の行動を予約させる”という権能を所有者に授ける。


アクトレスの行動はこちらの予定通りにしか進まないはず。


結論が脳裏に閃いたその瞬間、マリアは自らが感じた違和感の出所に気づいて戦慄する。


私たち「領主」が管理している”禁書”は基本的に預言書としての属性を持つ。


その共通した盲点があらかじめ押さえられているとすればッ…!


マリアは真名に対して遅すぎる程のタイミングで敵意を向ける。


ようやく意思や感情の疎通が叶う機会を得た真名が浮かべた微笑はマリアにとっての破滅の確約がなされたその象徴となった。






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